今年の総括です
こんにちは。米澤です。
今日は十二月三十日ですが、五日ほど前のことです。
現在私は山に篭り、ちょっと集中的に原稿を書いています。その日も、九時半まで山の施設で原稿を書き、十時半の最終バスで寝泊りしている家に戻ってきました。
いつもでしたらまず真っ暗な部屋に明かりをともし、冷え冷えとした台所で、簡素な食事を作るところです。
ですが五日前のその日だけは、台所に人の気配がありました。不審に思い、抱えていたノートパソコンをそっと床に下ろすと、私は油断なく台所を覗き見ました。
「おかえり」
そこにいたのは、昔から良く知っている異性の知人でした。
刃渡り四十センチはある長大な包丁を、青白い炎で炙っているところでした。
「……あ、ただいま」
なにしてる、というかそれ以前になんでここにいる、といろいろ疑問はありましたが、とりあえず外套を脱ぎます。知人はその間に、紙箱から白いものを取り出しました。ケーキです。テーブルに乗せたそれを、炙った包丁で切り分け始めます。
そして、小皿に載せたひとかけを、
「ん」
と私に差し出したのです。
「え? いいの?」
「食べ切れんし」
知人は椅子に座り、早くも自分の分は食べ始めています。ケーキを分けてもらったことは嬉しくはあったのですが、この台所、椅子が人数分はありません。知人が座っている以上、私は床の冷え切った台所で、立ったままケーキを食べるしかありませんでした。
スポンジの間に苺を挟んで、生クリームを塗った、ごく普通のケーキでした。ですが、それが入っていた紙箱には、この町一番のケーキ屋の店名がプリントされていました。安くはなかったろうと思います。
「……んまいね」
「うん、んまいね」
皿の上からは、先に知人のケーキが姿を消しました。知人は、生クリームのついたスプーンをひと舐めすると、
「じゃ」
とだけ言って、そのまま帰っていきました。
ケーキだけでは腹が膨れませんでしたので簡素な食事は作りましたが、知人がストーブに火を入れていたので、台所は冷え冷えとはしていませんでした。
今年一年を振り返ってみます。
一月:短編集の企画を実現せんと目論み、新春感謝会に乗じて短編を抱え、東京に赴く事
二月:『さよなら妖精』発売に先立ち、サインを書きに再度上京し、サボテン入り鞄を車内に忘れる事
三月:新作の反応を楽しみにしつつ、短編集をいよいよ進め、幾つかのインタビューをお受けする事
四月:短編集を一度完成させるも、納得のいかぬことあり、修正に時間を頂く事
五月:古典部三作目に取り掛かり、短編集も大詰めを迎え、『さよなら妖精』増刷される事
六月:少し時間を作り、積んでいた本を集中的に読み、短編集の題を『春期限定いちごタルト事件』とする事
七月:知恩院を巡り、鞍馬山に登り、祇園祭は見ない事
八月:古典部三作目大詰めを迎え、お山の図書館に篭り、更新を定期的に行うとする事
九月:推敲し、校正し、プロットを練る事
十月:オフ会に参加のため名古屋に赴き、鮎川賞パーティーに出席のため東京に赴き、多くの人と話をする事
十一月:『春期限定いちごタルト事件』校正を完成させ、短編が雑誌に載り、新作に本格的に着手する事
十二月:『春期限定いちごタルト事件』発売され、増刷され、新作のため再び山篭る事
主に仕事がらみで振り返ってみました。
身体は概ね大過なく過ごすことができました。
年頭の「三冊出す」という目標が達成できなかったのは残念ですが、仕事上の経験はいろいろとさせて頂いた一年ではなかったかと思います。
幸い、『さよなら妖精』も『春期限定いちごタルト事件』も、読者の皆様のご支持を頂きまして版を重ねることができました。お蔭様で、次の仕事の目処が立つようにもなりました。
総じて良い年だったのではないかと思います。読者の皆様により深く満足して頂ける作品が出せ、お世話になった方々にご恩返しの出来る来年でありたいと願っています。
まあ、進めている原稿がいま切りの良くないところで止まっていますので、明後日にある種の「区切り」が来るという感覚がかなり薄いのですが。
とにかく、まあ、あれです。
良いお年を。
(04.12.30)
裏話です
こんにちは。米澤です。
去る12月18日に、新作『春期限定いちごタルト事件』が発売となりました。皆様のご支援のおかげでこうして四作目を出せたこと、ありがたく思います。
さて、きょうはその『春期限定いちごタルト事件』に関わる話を少し書いてみます。
「裏」話というほどドロドロしたものはありませんので、確執とか愛憎とかをお望みの方はがっかりなさいませんよう。
お読み頂けた方には、本作の最初の仮題が「狐狼の心」だった理由はお分かりいただけるかと思います。五作入った短編の、最も長い話が五話目「狐狼の心」なのです。表題作を選ぶとすれば、これが妥当なところでしょう。
ですが、作品全体の雰囲気から考えると、「狐狼の心」はいかにも硬く、似つかわしくありません。そんなわけで、本作は長い間、「短編集」というコードネームで呼ばれてきました。
作業は順調に進み、仮題をつけるべきところまでやってきました。米澤の新作連作短編集を出すかどうか、東京創元社様で会議に諮る段階になったのです。まさか「短編集」というわけにもいきませんから、きちんと考えなければいけません。しかし、『さよなら妖精』の時のような、内容に即した題はなかなか思いつきませんでした。
そこでなんとかひねり出した四案のうちの一案が、『限定版いちごタルト事件』でした。
個人的には悪くないと思いつつも、まさか創元推理文庫でこの題が通るとは思わず、よりよい題が浮かぶまでのツナギのつもりでした。
数日後、担当編集氏からのご連絡を頂きました。企画案は無事会議を通過し、連作短編集が本になることはほぼ決まったわけです。
胸を撫で下ろしながら、ふと気にかかって尋ねました。
「タイトルは、やっぱり考え直しですか」
返答は意外なものでした。
「いえ。かなり好評で、このままいけそうです」
と、東京創元社……。
しかし、そのままというわけにはいきませんでした。『限定版いちごタルト事件』を世に出した場合、当然こういった疑問が浮かんできます。「では、『通常版』はどこにあるのか」、と。
その紛らわしさを防ぐため、「限定版」の語を「春期限定」に変更しました。かくして『春期限定いちごタルト事件』というわけですが……。
私の部屋の、創元推理文庫の棚に差し込むと、結構インパクトはありますね。
まあインパクトがあればいいというものでもありませんが。いかがでしたでしょうか?
解説を極楽トンボ氏にお願いした経緯は、極楽トンボ氏ご自身が解説の冒頭で述べておられますのでここでは略します。
で、装画ですが。片山若子氏に描いて頂いたのは、私が無理をお願いした結果です。
今回、担当編集者氏から初めて、装画をどなたにお願いするか希望を訊かれました。前の『さよなら妖精』の時は写真を使うということで誰にも異存がなかったため、イラストレーターさんにお願いするのは随分久しぶりになります。希望を言えるのなら、ということで、数日のお時間を頂き丸一日を大型書店で使いました。文庫本の表紙を見てまわったのです。
出来上がった候補リストの中から、明らかにムリという方を外します。残った名前をインターネット検索にかけ、辿り着いたのが片山若子氏のサイト「
渋皮栗」でした。
実は店頭で見た限りでは(まだ舞城王太郎『みんな元気』が出ていなかったこともありまして)、どんな絵を描かれる方なのかはっきりとはわかりませんでした。しかし「渋皮栗」の中の、とある絵を拝見して、これは是非お願いしたいと思うようになったのです。
担当編集者氏には無理を言いましたが、出来上がった本を見まして、片山若子氏にお願いできてよかったと心から思いました。
「イラスト」を「装画」にして下さったのは、いつもお世話になっているブックデザイナーさん岩郷重力+WONDER WORKZ。です。
書影は私のサイトにも上げていますが、実物はまた一味違います。もし『春期限定いちごタルト事件』が書店の棚に差してあるところを見つけましたら、ちょっと引っ張り出して一目ご覧頂きたいと思います。
今回は、いつにも増して、いろいろな方のお力を借りて一冊の本を作った、という気がしています。
後は、読者の皆様の判断を待つばかりです。
こんなところですね。
次は年の瀬、12月30日の更新になります。では。
(04.12.20)
やって来ます
こんにちは。米澤です。
四六時中クリスマスソングが流れる季節になりました。客として店に入ってでさえエンドレスのクリスマスソングは鬱陶しいのに、店員として勤務時間中延々とそれを聴かされるとなるとたまりません。全国の小売の皆様、お見舞い申し上げます。
ところで、クリスマスソングに「サンタが町にやって来る」という歌がありますね。♪Santa Claus is coming to town、というあれです。
あれを聴くと、どこかエキゾチックな警告音と共に、
WARNING!
A HUGE BATTLESHIP "Santa Claus" IS APPROACHING FAST!
と言われているような気になりませんか? そうか来るのか、なら迎え撃たねば、という気になりませんか?
なりませんか。そうですか。いや、いいんです。なんでもありません。私の勘違いです。
もちろん私もそんな気にはなりません。大丈夫です。もう治りました。
(04.12.10)
例を挙げます
こんにちは。米澤です。
今月は日曜日によくひとと会います。
秋の日曜の昼下がり、髪を整えておめかしして、新しい服に身を包んでお気に入りの靴を履き、駅で待ち合わせし、静かな喫茶店で、上手く殺しただの下手に殺しただのいう話を延々とやるわけです。
大変よい休日の過ごし方だと、自分でも気に入っています。
さて。この十日間はあまりこれといったことをしてませんでした。ですが、「いま原稿書いてます」だけで更新終了というのも少々寂しいもの。申し訳ありませんが、楽屋っぽい話でお茶を濁させていただきます。
きょうは一つ、例を挙げて「正しい原稿の送り方」を書いてみます。
たとえばある日が、再校を出版社様に送り返す日だったとしましょう。消印有効じゃあるまいし送付の日付が問題になることはほとんどありませんので、正確には「その日に運送会社に渡せば約束の日に担当編集氏の手に再校ゲラが渡る日」ということになります。
再校と言いますと、既に一度校正され著者自身もチェックした(このチェックを著者校正と呼びます)ものを、念の為にもう一度校正の方に見てもらったもののことです。原稿にあった大きな矛盾や過不足は最初の校正(初校)でチェックされていますので、再校はまあ、本当に念の為です。
ところが時には、再校ゲラの著者校正の最中に、これまで誰も気づかなかった瑕が見つかることがあります。なにせ著者本人、編集者、モニター(出版用語ではありません。私的に原稿を読んでもらう相手のことをわたしが勝手にそう呼んでいるだけです)、校正者が再校まで見落としていた瑕ですから、気づきにくいものには違いないでしょう。
ですが気づきにくい瑕ならそのままでもいいというわけにもいかず、夜を徹しての解決策模索になることも、まま、あります。解決策と言いましても再校の段階ではページ数が確定していることが多く、ページ数の確定はほとんどそのまま値段の確定になりますので、あまり字数を使うわけにはいきません。ごく短い語句で矛盾を解く、あるいは説明を加えるなどの作業をしなければならないことになります。
悩みに悩んだ挙句、ちょっと疲れた、と夜食を求めにコンビニに行くこともあるでしょう。ところでこれは稀なケースですが、その街で最近連続放火事件が起きていたりすることも、考えられなくはありません。となりますと、度重なる放火で低下した信頼を取り戻そうと、警察が深夜のパトロールを強化していたりすることもありうるでしょう。
不審者には職務質問を。
突発的な用件に時間を取られた結果、ゲラ送付日当日になってもまだ著者校正が終わっていないということもあります。それどころか矛盾の解決策もまだ思いついていない、という非常に厳しい事態も、起こりえないとはいえません。また、一度通してチェックしたからといってそのまま送ってはいけません。もう一度読み直す余裕は欲しいところです。その時間も考えた場合、状況芳しからず、ということにもなるでしょう。
ゲラの送付は宅配便を使って行います。近所のコンビニで送れますので大変便利です。
ですが、宅急便だろうと郵便だろうと、集配時間というものは必ずあります。たとえば近辺のコンビニの宅配便集配時間が15時で、14時40分時点でまだ矛盾が解決しない、というシチュエーションも可能性としては考えられます。ですがここで慌ててはいけません。宅配便をよく使われる方はご存知でしょうけれど、宅配便には集荷所というものがあります。ここに直接持ち込めば、集配時間に関係なく直近の便に荷物を載せてもらうことができます。
持ち込みを決意した場合、数時間の時間的余裕が出来ます。
さて、その数時間で、解決策が閃き、再校の著者校正が無事完了したとしましょう。
送付に必要なものは、ゲラを入れる丈夫な紙袋、出版者様の住所を書いたもの、糊またはガムテープ、送り状を書くボールペン、赤いマジックインキです。赤いマジックは、袋の表に「原稿在中」などと書くことで出版者様の手間を軽減する働きがあります。たまに忘れますが、それはそれです。
余談ですが、もしこれが「投稿」でしたら必要なものはもう少し増えます。穴あけパンチと、綴り紐がそれです。
移動手段が原付しかない、という場合もありますね。原付で夜の街に飛び出します。それが冬の気配濃い11月だったりすると、吹く風はきっと身を切るようでしょう。ですがまあ、そのぐらいは我慢します。ふと、いまは何時だろうということが気になることもあります。急いでいて腕時計も嵌めていなくても大丈夫、携帯電話に時刻表示機能がついています。
ところで最近道路交通法が改正されまして、運転中の携帯電話の使用は禁じられています。
そしてこの街では連続放火で警察の威信低下でパトロールが以下省略。
君ね、いま携帯電話使ってたでしょ? いえ、使っていません。時計を出して見ただけです云々。
メールの差出人を見るだけでもね、対象になるんだよ。 いえいえ、操作は一切行っていません。操作するとアップライトが働き五分間は消えない仕組みですが、ご覧の通りいまは省電力モードでして云々。
突発的な用件に時間を取られた結果、集荷所への所要時間が倍になることも、あらかじめ考えに入れておいたほうがいいでしょう。さて、ようやく集荷所に到着しても、まだ終わりではありません。送り状を書きます。送り状は出版者様で用意していただけることもありますが、用意していただいたのは日本通運の送り状、近所の集荷場は佐川急便のもの、という場合などは急いで書かなければいけません(この場合も、用意していただいた送り状は「出版社の住所を書いたもの」として利用できますので無駄にはなりません)。
ですが気をつけたいのは、集荷場は基本的に実務作業の場所であって、顧客サービスのためにある場所ではないということです。送り状を書き上げた、袋にも貼った、あとは運送会社の方に渡すだけ、と顔を上げると、事務所に誰もいないということも、あります。
目の前を、どこ行きかはわからないけれどトラックが発進していく、ということも、あるかもしれません。
こんな場合であれば、ようやく現れた運送会社の方に、随分意気込んで尋ねることになるでしょう。
「きょう出して、あした東京に着きますか」
と。運送会社の方は、こんな風に答えるかもしれません。
「あー、着くよ。うん。大丈夫。午前中指定にしとくね」
安堵に胸を撫で下ろしながら、二度とこんなことがないようにと心に誓うでしょう。そして、そのための目安として、こう訊いた方がいいでしょう。
「すみません。何時までであれば、翌日東京に着くんでしょうか」
「九時だねー。九時でぎりぎりだねー」
そして反射的に壁掛け時計に目をやると、針が九時二十分を指していたりも、するかもしれませんね。
「原稿の送り方のダメな例」でした。
ご利用は計画的に。
(04.11.20)
結婚しました
知人と従弟が立て続けに。四日間に二件の結婚式でした。
こんにちは。米澤です。
結婚式外交もたっぷりとやってまいりました。古い友人に会うのは楽しいものです。夜更けまで談笑するうちに会話は自然と昔のことへと遡っていきます。そこでぽろりと出たのが、ドラゴンクエスト4でどんなレギュラーパーティーを組んでいたかという話。
「米さんはどうだった?」
と訊かれて、ほろ酔い心地のままに答えました。
「ああ、勇者・アリーナ・クリフト・マーニャだった」。
途端、妙な空気が。知人の一人が深く頷き、詠嘆するように言いました。
「米さんらしいね」
「どこが」
「マーニャが入ってるところが」
??? ブライでも入れてるんならともかく……。
……しかしとにかく、外部から見た「米澤らしい」ということの一つに、「ドラクエ4でパーティーにマーニャを入れる」があることはわかりました。
意外な自分、再発見です。
それにしても、四日間に二件、場所は京都と飛騨というのは少々気ぜわしくありました。移動の都合上、五泊六日の小旅行となりましたし。
折角日数を使うんだから紅葉でも見てやろうかと思ったところ、京都はまだ始まっておらず、飛騨では終わっていました。
このやろう、こうなったら意地でも秋の京都を見てやるから憶えとけ、と意気込んだわけでもありませんが、今月の二十五日から三日ほど近畿地方に行って来ます。
メインターゲットは泉佐野市と京都市なんですが、時間があれば大阪市日本橋のDVDショップでも冷やかすのもいいかもしれません。
それと。
12月に東京創元社様から出していただく文庫書き下ろしの題名が変わりました。
仮題は『春
季限定いちごタルト事件』でしたが、正式タイトルは『春
期限定いちごタルト事件』と決まりました。
値段は、なんとか当初の予定通り、500円台に収まったようです。書影、ページ数、ISBN番号など決まりましたらいち早く「お知らせ」でご報告します。
ではまた、近いうちに。
(04.11.10)
その後の価格決定の際、『春期限定いちごタルト事件』は税込で600円台になりました。
十月の総括です
こんにちは。米澤です。
月末ですので、今月なにをしていたを振り返ってみます。
今月は端境期といった感じで、がしがし原稿を書いたりはしていませんでした。次作のプロットを練ったり、それに関する調査を進めたりしていました。
また、オフ会に出たり、マーチングバンドの全国大会を聴きに行ったり、鮎川賞授賞式への出席のため東京に行ったりもしていました。新宿に、四千円台で個室ベッドで眠れるホテルがあると言ったところ、東京在住の皆様にひどく驚かれました。ビジネスホテルならそんなもんだと思いますが。
そんなわけでミステリ関係の方とお会いする機会の多い月だったわけですが。
とあるミステリ用語に関して、私はいつも己の未熟を痛感します。その用語を口にするとき、私は自信のなさからつい、声が小さくなってしまうのです。
こればかりは、生まれつきの要素も大きいのでしょうけれど……。
ですがだからといって、ほいほい諦めてはいけません。なんとか修練を積み、いずれは、胸を張ってこう言えるようになりたいものです。
「叙述トリック」と。
いえ、会話の最中に言おうとすると、「じょじゅちゅトリック」になるんですよ。嘘だと思ったら早口で三回どうぞ。
あっさり言えた方は私より滑舌が良いということですが、だからといって自慢にはなりません。
さて、鮎川賞授賞式でじょじゅちゅトリックの話をしながらアワビをたらふく食べるためだけに東京に行ったわけではありません。新しい仕事の話も二、三して来ました。
そんな打ち合わせの最中、徒歩での移動中。場には私と、編集者の方と、営業の方がいました。
まるで体力がないわけではないはずの私ですが、今回は結構用件が多くあちこち動いたせいか、そのときは少し疲れていました。頭もどうもふらふらとはっきりしません。顔色を察してくれたのでしょうか、編集氏からこう問われました。
「調子悪そうですが大丈夫ですか?」
意地を張っても仕方がありませんので、素直に答えます。
「ええ、ちょっと……。頭痛が痛くて」
その瞬間、空気が凍りつきました。
「ず、ずつうが?」
「いたい?」
しまった、と思った時にはもう手遅れでした。
「頭痛が痛いって言いましたよ、いま」
「米澤さんが頭痛が痛いって!」
いえ、その、これはほんの言葉のアヤで、いえ冗談で!
二人はひそひそ声で話し始めます。
「これは少し考えた方がいいんじゃないですか」
「そうだね。頭痛が痛いとか言うひとはちょっとねえ……」
全く、実に、運命の落とし穴はどこに口を開けているかわかりません。
最後に。
サイトのあちこちでばらばらに情報を出していった結果、今後の予定がわかりづらくなっているようなので、少しまとめてみます。たまにはtableタグも使わないと、使い方忘れますしね。
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題名
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出版社
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刊行時期
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版形
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形式
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シリーズ
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Do you love me?
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東京創元社
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今年11月
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雑誌収録
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短編
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ノンシリーズ
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春期限定いちごタルト事件
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東京創元社
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今年12月
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文庫
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連作短編
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ノンシリーズ
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四人四色学園祭(仮)
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角川書店?
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来年早いうち?
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未定
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長編
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古典部
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未定
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東京創元社
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晩春?
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未定
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長編
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ノンシリーズ
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ノンシリーズとあるものは、シリーズ第一作にもなりえます。そこはそれ、流動的な都合次第です。
(04.10.30)
奇遇です
こんにちは。米澤です。
偶然というのは面白いもので、とてもありえないような偶然も時に起きたりします。ミステリーで、探偵がたまたま入った喫茶店でたまたま隣り合った席でいま請け負っている事件の犯人が犯行計画をたまたま呟いていたりして事件が解決してしまったら、読者はその本をどうするでしょうか。
ですが、私はそういう小説はよくないと思っても、そういうことが事実起きてもさほど驚きはしないでしょう。
以前(1990年)、大阪花博というイベントがありました。知人が、仕事でそこに行きました。
その場で彼は、義理の父母に会ったそうです。知人とその義理の父母とは、大阪からは遠く離れた、それぞれ別の土地に住んでいます。また、その日に互いが花博に行く予定だったなどということは知りませんでした。会場は随分混雑しており、たとえ待ち合わせをしていたとしてもそう簡単には互いを見つけられる状況じゃなかったといいます。そんな中、偶然行き会うとは、これはなにか縁があるとしか思えません。
いえ、縁なら「義理の親子」という縁が既にあるんですが。
先日、知人Aからメールを頂きました。お前が本を出したとは知らなかった、図書館で借りてみるといったメールでした。買えよと書いて送り返してやりましたがそれはともかく、彼はいま東京に住んでいるそうですので今回数年ぶりに会うことになりました。
ところで、東京にはもう一人、知人Bも住んでいます。彼とは知人Aよりも少々縁が深く、年に一回は時間を作って会う仲です。そのBとは今回は会う予定はなかったのですが、たまたまAとBに小学校時代からの親交があることがわかり、Bも一緒に会うことになりました。
世の中狭いものです。
さて、知人Cと知人Dというのもおりまして。
昨日、Aからメールを貰いました。新宿駅でたまたま、CとDの二人に出会ったというのです。高校卒業以来の邂逅だったそうです。
確かに私の知る限り平日の新宿駅は常時ひとごみというほど混雑はしませんが、それでもあの広大な場所で、それも全国に散らばったはずの高校時代のクラスメート同士が偶然出会うというのは少々できすぎています。
本当に全く、世の中狭いものです。たまたまBに電話をかける用がありましたので、その通話の中で笑い話としてこの話を出しました。するとBは、しばらくの沈黙の後言いました。
「CとDなら、この前たまたま、バスの中で会ったぞ」
さらにBは言いました。
「ところで、いまEと飲んでるんだ」
知人Eは故郷を出ておらず、東京には年に三、四度出かけるだけのはずです。
……世の中狭すぎです。
こうなったらたまたま隕石が当たって人が死んでしまうミステリでも書いてやろうかと思いましたが、先例があることに気づいてがっくりです。
ではまた、近いうちに。
(04.10.20)
「たまたま隕石が当たって人が死んでしまうミステリ」とは、『乱れからくり』(泡坂妻夫・創元推理文庫)のことです。
オフ会がありました
「……というのは小さな問題じゃないと思うんですよね。たとえばアイルズ名義ですが、『試行錯誤』は非常に面白いんですがただあれで思うのが」
などと調子に乗って喋っていたところ、総ツッコミが入りました。
「『トライアル&エラー』」
「『トライアル&エラー』ですね」
「『トライアル&エラー』ですよ」
「ああ、『トライアル&エラー』」
「『トライアル&エラー』ですか?」
「『トライアル&エラー』です」
うう。わ、私が読んだのは「試行錯誤」なんですよう。泣きそうな私に、担当編集者のK氏がとどめを刺しました。
「ついでに、バークリー名義です」
おなじ涙がキラリ。
こんにちは。米澤です。
去る10月2日、「春期限定いちごタルト事件」の詰めを行うため、東京創元社の担当編集者氏が近くまで来て下さいました。この際だからということで
名古屋創元推理倶楽部の方々にご紹介頂くことになりました。
これだけでも身の引き締まる思いがしたというのに、担当編集者氏と連絡を取る度に参加予定者が増えたと伝えられまして、最終的には
名古屋創元推理倶楽部の方々に加え、
石野休日さん、
草三井さん、
極楽トンボさん、
正宗九さん、
滅・こぉるさんにご参加頂くことになりました。
ご存じない方、お忘れの方も多いかと思いますが、私はもともとネットに読み物を上げていた身です。ネット上の巡回は、割りにやる方ではないかと思います。上の各サイトは、頻度に差こそあれ全て巡回ルートに入っていました。コンタクトを取ったことはほとんどありませんが、全く事前情報のない初対面の方ばかりというわけではなかったのは、少し安心できることでした。……ただ、何人かは性別を誤認していましたが。まさかあの方がそうだとは!
ご多忙の中遠方からおいで下さった皆様方には、重ねてお礼申し上げます。
季節の変わり目といいますか、微妙な気温の日でした。ジャケットを着れば暑く、脱げば肌寒い。傘が不可欠なほどではありませんが、雨も降っていました。名古屋駅に着きますと、号外が配られていました。ちょうど、イチロー選手がシーズン最多安打大リーグ記録を塗り替えた日だったのです。号外を受け取りながら、私はふと初めて名古屋に来た日のことを思い出していました。あの日も名古屋駅では号外が配られていました。あれは
1995年3月20日のことでした。「東京でゲリラ」の見出しに、何が起きたのかと仰天したことを憶えています。いまなら、「東京でテロ」と書かれるところですね。
駅内の店で、まずは仕事の話を済ませまして。
サインをさせて頂くことになるかもしれない、ということで、ペンを買いました。担当編集者氏と、「これ買っていって誰も本持ってきてなかったら面白いですね」「確かにそれは面白いですね」と心休まる会話を交しながら待ち合わせ場所へ向かいます。
申し訳ないことに、少し遅れてしまいました。小雨の中、皆さんと合流します。近くのカラオケボックスで簡易サイン会ということになりました。ありがたいことに皆さん拙作をご用意下さっていました。私のサインは、あいも変わらず楷書体です。同日、同じ名古屋で谷川流氏のサイン会も開かれていたそうで、ちらりと氏のサインを見せて頂いたところ、見事な「サイン」でした。かくあるべし、なんでしょうけれど。
場所を居酒屋に移します。
一つテーブルにつくには少々大所帯ですので、二つに分かれました。自然と、と言いましょうか、概ね創元推理倶楽部の方々の卓とネット関係の席とに色分けされたようです。
創元推理倶楽部卓ではミステリーの話を、ネット関係卓ではライトノベルの話を主にしていたように思います。もちろん、そのどちらでも、ちょっとここには書けないような面白い話も出ましたが。
ちなみに冒頭のやりとりは創元推理倶楽部卓でのことです。ただ、あれだけだと誤解を招きかねませんので補足しておきますと、皆さん大変気持ちの良い方ばかりでしたよ。居心地のよさについ、ミステリーにまつわるものとしてはごく初歩的な問題意識を臆面もなくまくしたててしまいましたが、黙って聞いて頂き、適切なコメントも頂くことができました。
話は自然と好きなミステリーはということになりまして、私もいくつか挙げました。ただ、うっかりしたものです。列挙するならこれを忘れては、という作品を言い忘れました。
また、この卓には書店員さんが二人もいらっしゃいました。となればスタンダードな話題は万引対策です。「高校時代陸上部で鍛えた足で万引犯を追った」という話を聞きまして、私も言いました。「高校時代弓道部で鍛えた弓で万引犯を
すいません、嘘混じりました。
ネット関係卓の皆さんは昼ごろから行動を共にしてらしたようで、既に随分打ち解けた会話をしていました。
なお、好きなライトノベル作家(主として、ライトノベルと目されるレーベルから本を出している方、ぐらいの認識で)の話も出まして、私もいくつか挙げましたが、やっぱりこれを忘れてはという作家を言い忘れてしまいました。
いえ、天然ボケとかそういうことじゃないんですよ?
たとえ鴨居に頭を(極めて激しく)ぶつけたのが事実だとしても。頭をぶつけるなんざぁ珍しくもありません。
神田駅でもやってます。
というわけで、言い忘れたことをここで補足しておきます。
好きなミステリーに、「椛山訪雪図」(泡坂妻夫 「煙の殺意」に収録)を、好きなライトノベル作家に秋山完を追加します。
他にもいろいろありましたが、まあ、このへんで。
ではまた、近いうちに。
(04.10.10)
九月の総括です
こんにちは。米澤です。
病める時も健やかなる時も履き続けた靴がとうとう大破浸水しましたので、涙を呑んでキングストン弁を抜くことにしました。
近所の靴屋で適当に見つくろい、じゃこれを、と指さしたところ、サイズ切れとのこと。別に大足でも小足でもないんですがね。
同じ町の中にチェーン店があり、そこになら在庫があるそうなので、時速30km/hの原付で出かけました。
ところが、「行けばわかる」と言われたランドマークの下に立っても、靴屋らしい建物は一向に見当たりません。捜しあぐねて、元の店に電話をかけました。
「すみません。チェーン店の場所を、もう少し詳しく教えて欲しいんですが」
電話の向こうの女性は、大変丁寧に対応して下さいました。
「はい。ジーンズショップの隣です」
「……いえ、ジーンズショップと言われてもわからないんですが」
「その隣は回転寿司のお店です」
あなたは漫画ですか。ギャグ漫画のキャラクターですか。それともボケですか。ツッコミを心待ちですか。では言いましょう、なんでやねん。
「道で教えてもらえると助かるんですが」
「ではM銀行の通りを……」
そのM銀行の支店、この街だけで何店ある思てんねん。
溜息を押し殺します。私はもう、大体の方向さえわかればいいという気分になっていました。
「いま私は某デパートにいるんですが、そこから北か南かだけでも教えてもらえませんか」
「はい。右です」
キミとはやってられんわー。
月末ですので、今月なにをしていたかを振り返ってみます。ただし、小説に関することに限ります。
先月末、角川書店様に『四人四色学園祭(仮)』の原稿をお渡ししました。数日後、概ねOKのお返事と、修正して欲しい点を告げられました。修正期限は九月一杯ということになりました。
この数日の間に、短編を一つ書いてやろうかと目論んでいました。が、三日で書けるだろうと考えていた短編に意外と手間取り、一週間近くかかってしまいました。ちなみにこれは半ば趣味で書いたものですので、活字化云々の話は一切ありません。
その短編と平行して、プロットを一つ書きました。大枠では話は決まっていたのですが、細部の前後関係の調整に少し時間をかけました。まあ、プロットは出来ているに越したことはありませんが、書き始めると結構流動的になったりもするんですが。
上旬に、11月の『ミステリーズ!』増刊に掲載していただく短編のゲラを頂き、直しました。これは70枚程度で、特に重大な齟齬もありませんでしたので割に簡単な作業でした。タイトルはちょっと伏せておきますが、幽霊の話です。
それらの後に、『四人四色学園祭(仮)』の修正に入りました。別の作業を優先して時間を空けたのは、もちろん一旦距離を取るためです。
その作業中に、『春期限定いちごタルト事件』のゲラと、『ミステリーズ!』増刊用短編の第二校が届きました。後者は目を通す程度の作業ですが、前者は文庫本一冊分で、しかも結構訂正が多いので来月持ち越しです。
月末には『四人四色学園祭(仮)』の修正を完璧に済ませ、角川書店様にお渡ししました。
最後の一行だけ「予定」です。
いまちょっと時間がありませんのでこのへんで。
ではまた、近いうちに。
(04.09.30)
グレープショットです
こんにちは。米澤です。
図書館で作業中、行き詰まりを感じたので音楽を聴くことにしました。ヘッドホンをつけ、音楽ファイルを再生します。
……気のせいか、少し音が遠いようです。音量が小さいのかとツマミを捻りますが、遠い感じは変わりません。その間、およそ十秒。気づきました。
ヘッドホンのプラグが繋がっていません!
図書館の静謐をかき乱してしまいました。幸い、作業は個室ブースのような場所で進めており、平日ということもあってひとはそんなに多くはなかったのですが。顔が青くなり、赤くなります。しかし、その直後、私は心底ほっとしました。
流れ出したのは、一昔前のものではありますがごくありふれたポップスでした。もし、気まぐれに選んだ音楽ファイルが画面上でその一つ下に位置していたものだったら……。
危うく、図書館に
これが流れるところでした。さすがにこれを流しては、私もいたたまれなかったことでしょう。
さて。
シンデレラは仙女に、「十二時になったら魔法が解けるよ」と言われていました。ですが、遊び呆けていたシンデレラはつい時間を忘れ、時計の鐘が鳴り出してから慌てて駆け出します。その時にうっかりガラスの靴を落としてしまい、その靴がやがて恐るべき運命を導いていくことは皆さんご存知の通りです。
この話に違和感を覚えた方もいるのではないでしょうか。魔法なんてねえよ、とか、王子様と結婚すれば幸せだというのは男権主義がとかいった点ではありません。時計の鐘は、鳴り終わった瞬間にその時刻になるという性格のものではない、という点をいま問題にしたいのです。
その時刻になった瞬間に鳴り始めるのが、時計の鐘というものです。小学生のころ、休み時間のドッジボールで「鐘が鳴り終わるまでが勝負だぞー」としつこくボールを投げてきた手合いがいましたが、鐘が鳴った瞬間に休み時間終了の時刻にはなっているのです。なのになぜ、シンデレラの魔法は舞踏会場で解けてしまわなかったのでしょうか。
そんな枕から始まり、シンデレラの時代には城に大時計が備えられていたことは考えづらくあるとすれば小さな置時計であったろうこと、その置時計の中には十五分おきにベルを鳴らす類のものがあったことに繋げ、シンデレラは11時45分のベルを聞いて脱出を開始したのだろうと締める話を聞いたことがあります。
ところで、幼少のみぎりに読んだ「十五少年漂流記」ですが。
あれ、ラストに大砲を撃ちますよね。黒人水夫が。
その弾は、見事海賊たちの乗ったボートに命中します(正確には「反乱を起した水夫」だったかと思いますが)。その結果海賊は全滅。十五少年+黒人水夫はその手を血で汚しながら、フレンチ・デンの平和を回復します。
幼き日の私は、この話に違和感を覚えました。
黒人水夫は、決してゼロ距離から砲撃したわけではありません。彼のいたフレンチ・デンから、海賊たちが逃走に使用した川までは、それなりの距離がありました。大砲は、別に軍艦というわけではない帆船スラウギ号から引っ張ってきたものです。射程も知れたものでしょう。黒人水夫は直接照準ではなく、曲射で海賊たちを砲撃せねばならなかったはずです。
通常、大砲を命中させるには、試し射ちを複数回繰り返すことになります。何度も試し射ちし、まずは目標を挟むように弾が飛ぶよう調整し、それから当てにかかるのが常道です。スラウギ号が漂流したのは1860年のことですから、なお試射の必要は高かったでしょう。
それなのに、彼は一撃必殺で、海賊たちを葬ってしまいます。
この黒人水夫、名をモコといいますが、果たして何者なんでしょうか? それとも、モコに砲術の知識がなくても命中弾を出しうる要因が、なにかあったのでしょうか?
その謎を解く鍵は、砲弾に隠されていたのです!
脅威の命中率の秘密はなにか。モコは果たして「一発だけ」撃ったのか。フレンチ・デンと幕末維新戦争の隠された繋がりとは? 全てを繋ぐキーワードは……「葡萄」。
以下緊迫の次号。驚愕の真実が君を待つ。
嘘です。続きません。これで終わりです。
ではまた、近いうちに。
(04.09.20)
立腹です
こんにちは。米澤です。
今週の初め、ちょっとした所用で出版社様に電話をかけました。ごく実務的な相談をしようと思っていたのですが、先様は全てを許す非常な寛容さでこう言いました。
「角川さんが済んでいないんですね。いいですよ、こちらは待てますから」
私は非常に立腹しました。
「なにを言っているんです。書き上がってますよ。
一日40枚ペースなら一日に40枚書きます。期日に間に合わせるなんて当然のこと、常識以前じゃあないですか!」
受話器の向こうから、カチリという硬質の音が響いてきます。
「テープまわってましたから」
調子に乗ってましたすみません。
さて。きょうは少々つらい話題を。
ネット上をまわっていると、多くの「書評サイト」を目にします。そもそも、読んだ本について一言、あるいは詳細に書き残しておく行為は推奨されるべきものと思います。本から受ける印象は受け手の状態によって全く異なりますので、去年の自分の感想と今年の自分の感想が全然違うということも充分考えられます。読んだ本についてメモを残すことは、従って、その本を読んでいた日々を保存することにもなります。そのことのセンチメンタルな効用と実用的な効用については、なにも書き記すまでもないでしょう。
しかしそれをネットに上げるとなれば話は別です。
読者には誤読の自由がある。一度手を離れた物語は、いや手を離れる以前からそれは、作者のものではなく読者のものである。なるほどそうでしょう。基本的には、私もそれを了解します。
ですが、あまりにもひどい読みも多々見受けられます。いくら誤読の自由があるからといっても、ゾウの話をキリンの話と思い込むようなことはちょっといかがなものでしょうか。
ややエゴイスティックなことを言いますが、やはり気になるのは自作についての誤読です。ありがたいことに、私が以前から行きつけにしていたいくつかのサイトでも拙作は取り上げて頂けました。ですが、それについて読むとき、私は時折非常に悲しい思いをしました。私はそんな風には書かなかった、モニターの前で、何度その悔しさを噛み殺したことでしょう。
きょうは、その悔しさをぶつけてみます。
私が書評サイトで書かれて嫌になる言葉ワースト3を挙げてみようというのです。
ですが、あまり負的な言葉は目にしたくないという方もいらっしゃるでしょう。それを考え、ここからしばらくは反転を使うことにします。
第三位:米沢穂信
「米澤」ですって。
ですがまあ、これはなにか規則があって、図書館関係では全てこのように表記されるようです。それに私だって「安孫子武丸」「鷺沢萌」といった誤記・省略をしたことがありますし(反省しています)、そんなに人のことを言えた義理じゃありません。
ちなみに番外編として、「木澤」というのも見ました。それはさすがに、間違えすぎです。
第二位:さよなら、妖精
読点は入りません。
第一位:氷果
「ひょうか」って打って変換すれば普通に「氷菓」になるでしょーがッ! 氷結果汁ですかこんちくしょーッ!
どうやって出したんですかこの誤変換。それともATOKだと「氷果」が最初から出るんですか。
え? 内容についてですか?
いえ、それはもうご随意に。
ええとそれから。
一応の完成を見た『四人四色学園祭(仮)』について、角川書店様の編集さんと詳しく相談をした結果ですが、
「プレイステーション2の『どろろ』は欲しいが、やってる時間がなさそうだ」
ということに落ち着きました。
ではまた、近いうちに。
(04.09.10)
試験ではなく検定です
こんにちは。米澤です。
先週のことですが、角川書店様の編集氏からお電話を頂きました。
「来週が締切ですが、どうですか?」
いつもながら、爽やかな話し方です。私もにこやかに答えました。
「一日40枚ペースで大丈夫です」
ほんの少し、暗算の時間がありまして、
「つまり、まだ全然出来てないってことですね!」
いつもながら、大変爽やかです。
さて。縁あって、大学入学資格検定の検定監督を引き受けました。
大検を受けるからには、受検者たちは全日制高校の現役生徒ではありません。高齢の受検者ももっといるかと思いましたが、ほとんどが十七、十八歳ぐらいでした。
受検者は皆が皆、大学入学資格を得るために受検していてるというわけではないんですね。といいますのも、大検で検定合格となった科目は、定時制高校の単位として認定されるという側面があるからです。大検を上手く利用すれば、四年かかる定時制高校を三年で卒業することも夢ではありません。この情報が誰かの人生設計の一助になれば幸いです。
まあ、来年からは制度が変わるそうで、新制度がどうなるかは私は知らないんですが。
さて、世界史の検定の監督をしていたときのことです。机間巡視(きかんじゅんし:教壇から降りてうろうろすること:旗艦巡視という漢字のイメージが離れません)にも飽きた……、いえいえ、必要を認めなくなりましたので、検定問題を開いて読んでみました。
読むこと数分。
ううむ。なかなかよい問題が目白押しです。いえ、受検者たちは必死なのでしょうが、しかしこれは素晴らしい。
ついつい、ネットで紹介してみたくなりました。検定は既に終了していますので、公開に問題はないことをあらかじめ断っておきます。
さて、検定には「世界史A」と「世界史B」があるようです。大雑把に言って、「世界史A」は近現代史のみ、「世界史B」は全史という区分のようですね。まるで違った問題が出るというわけではなく、共通問題もありました。
たとえば、世界史AもBも、第一問は同じ問題でした。
こうです。
下線部分独ソ戦に関連して、1942〜1943年にヴォルガ河畔の都市を中心に行われ、独ソ戦の転機となったとされる戦いを、次の(1)〜(4)のうちから一つ選べ。
…………。
どう選択しようが絶対に答えなければいけない公教育上の必須知識ですか。
どんなに固い意思でもいつまでも我慢していられませんか。人間だけが耐えるのですか。補給を空輸だけに頼るのは土台無理な話ですか。うらーですか。
ちなみに選択肢は
1)マルヌの戦い
2)インドシナ戦争
3)ワーテルローの戦い
4)スターリングラードの戦い
でした。
しょっぱなからなかなかのブローです。どんどんいきましょう。
下線部分アリストテレスが家庭教師を務めた人物で、後にマケドニア王として東方遠征をおこない、アケメネス朝を滅ぼした人物を、次の(1)〜(4)のうちから一つ選べ。
1)ド=ゴール
2)ルイ=ナポレオン
3)レーニン
4)アレクサンドロス大王
いや、一人だけ時代が離れすぎですって。
もう一つ。
下線部分エカチェリーナ2世が親交を結んでいたといわれるフランスの啓蒙思想家を、次の(1)〜(4)のうちから一つ選べ
啓蒙思想家が並ぶのかと思ったんですが……。
1)イエス
大復活です。
2)スカルノ
そもそも「思想家」と呼ばれることすらあまりなさそうです。
3)ホー=チ=ミン
せめてフランス人と勘違いしそうな名前を出してみようとか思いませんでしたか?
4)ヴォルテールということでした。
ちなみにここまでの正解は全て(4)です。
では最後に。
下線部分唐をアッバース朝が破ったタラス河畔の戦いの際に、イスラム世界に伝えられたといわれるものを、次の(1)〜(4)のうちから一つ選べ
1)三圃制農法
2)コンピュータ
3)製紙法
4)楔形文字
正解は(3)ということになります。
ここまで色々紹介してきましたが、出題者を批判するつもりはまったくありません。あり得ない選択肢を織り交ぜ、問題そのものの正答率を高めるのも、目標平均点に近づけるための重要なテクニックなのでしょう。
ですがまあ、仕事で作るもので、狙いすぎはいかがなものかと。
ではまた、近いうちに。
(04.08.30)
集計結果です
こんにちは。米澤です。
里帰りからはとうに戻ってきました。
ですが図書館通いは続けています。こちらの図書館はほとんどの席を受験生が占めているのが困りものです。
まあ、辞書・資料類を閲覧するとはいえ、私も図書館が本来想定する利用者ではないのかもしれませんが。
先日、アンケートフォームを設置しました。今後の汎夢殿の運営について、皆様に意見を求めたものです。なにが望まれているのか? 選択肢は以下の四つでした。
・近況報告
・米沢穂積
・どっちでもいいから更新頻度を上げろ
・どうでもいいから本を書け
8月11日から8月20日までの九日間の設置でしたが、予想よりも沢山の皆さんにお応えいただくことが出来ました。ありがとうございました。
その集計結果をご報告します。
・近況報告……13(17.3%)
・米沢穂積……8(10.6%)
・更新頻度……28(37.3%)
・執筆速度……26(34.6%)
(有効回答総数:75通)
(百分率は小数点二位以下切捨)
結果を素直に読み取りますと。つまり、「書け」ということですね?
……わかりました。すみませんでした……。
アンケートにはコメントフォームも併設していましたが、そちらにも思ったより多くのメッセージを寄せて頂きました。激励のお言葉に深く感謝します。
さて、その中のいくつかには、お答えを返したいと思います。
フォーム設置の際、ここから送信したコメントを公開することがある旨は記載していませんでした。よって、署名のあったコメントも署名をつけず、また文そのものも文意を損なわない範囲で常体へと編集しました。
削除を希望される方はご連絡下さい。
・四つの選択を全部選ぶ事は出来ないのか
フォームなんて長らく作っていませんでしたので、ラジオボタンのタグを忘れました。
冗談です。
「近況報告と米沢穂積の両方」という方は、要するに「更新頻度を上げろ」とほぼ同義なのではないかと考えました。
一方、「更新頻度を上げ、執筆速度も上げろ」は、なんといいますか、その、あの。
それに、ラジオボタンのことに気づいたのがフォーム作成の二日後でしたので、集計の都合上途中から方法を変えたくはなかったのです。半分意図的で、半分過失です。過失の分だけ、すみませんでした。
・新刊に「影法師は独白する」も入れてほしい
東京創元社様と進めている『春期限定いちごタルト事件(仮)』は、すでに初稿をお送りしています。また、これは連作短編集で、登場人物や舞台設定などは全五作品で共通しています。残念ですが、古典部を舞台とした『影法師は独白する』を収録することはできません。
角川書店様と進めている『四人四色学園祭(仮)』は長編ですので、これも短編を収録することはかえって妙な本になってしまうかと思います。
今後、『影法師は独白する』を含む古典部シリーズの短編集を出していただける見通しは、いまのところはありません。しかし私自身は、絶望的とまでは思っていません。といいますか、『四人四色学園祭(仮)』をまず進めるということで、その先のことはあまりお話していないという現状です。
『四人四色学園祭(仮)』の作業が一段落したところで、それとなく打診してみます。その結果を公表しても差支えがないようでしたら、このサイトでいち早くお知らせします。
・十一月に短編が載る雑誌とはザ・スニーカーか
違います。
もう公的に発売が表明されていますから、大丈夫でしょう。
東京創元社様の雑誌『ミステリーズ!』に増刊号が出ます。叢書「ミステリフロンティア」の著者を中心にセレクトしたものになるそうです。その中に、拙作を掲載していただける見通しが立っています。
ノンシリーズものの短編で、これまでとは少し趣の変わったものを用意しました。発売が近づきましたら詳報いたしますのでお待ち下さい。
・古典部シリーズは『四人四色学園祭(仮)』で終わりなのか
違います。
ここで「文化祭三部作完結篇」と書いてしまったものですから、そういう誤解を与えてしまったようです。
拙作『氷菓』『愚者のエンドロール』は共に、文化祭の準備に絡んだ話でした。そして、『四人四色学園祭(仮)』は、文化祭当日を舞台にしています。そういう意味で、「文化祭三部作」と言ってみただけなのです。その先の予定がないことも事実ですが、終わりと考える理由もありません。
古典部シリーズで書きたいネタは、他にもあります。これからも機会を与えていただけるよう、いまは『四人四色学園祭(仮)』に専心しています。
・せめて月に一度は更新できないか
できます。
要は、小説とは基本的にはなんの関係もない、米澤穂信の生活というものをサイトに載せる価値があるかどうか、なのです。
言い換えると、「私の日記なんてつまんないですよ」ということです。
ですが、アンケートの結果、「なんでもいいから更新頻度を上げろ」というご意見を非常に多くお寄せ頂きました。
大変にありがたいご意見です。真摯に受け止め、小説関連以外のことでも積極的にアップすることで、更新頻度を上げていこうと考えています。
まあ言うだけなら簡単ですから……。
きょうは8月20日です。試験的に、0の付く日は更新してみることにしましょうか。無理があるようでしたら撤回しますので、悪しからずご了承下さい。
・米沢穂積みたいなネタものは大変ではないか?
時間はかかりますけど。
小説と違って、ほとんど脊髄反射の一発ネタで書けるので、気楽なのです。私自身にも、いいお遊びになっています。ただ、お遊びを楽しみすぎて、サイレントマジョリティには一人遊びと受け取られていないか、そこがちょっと不安ではありました。
幸い、「近況報告」にマークされた回答の中にも、「穂積もいいが大変そうだから近況報告」という方がいくつかありました。
図に乗って、また、遊ぶと思います。よろしければお付き合い下さい。
・のんびりしているのか切羽詰まっているのか判断のつかない近況報告が好き
どちらかというと切羽つまってます。Yeah。
・米沢穂積はネタがわかりづらいことがある
確かに、「わかるひとだけわかってね」を押し通しすぎるのは考え物です。私だって、そうしたものを読むと配慮して欲しいと思うことがあります。
趣味に走りすぎたキーワードには、説明になるサイトへのリンクを貼るようにしています。その上で、もう一言必要と考えた場合はalt属性で一言書くようにします。カーソルを乗っけてみて下さい。
オチがわからない場合? オチは説明したら寒いでしょう!
……ですが、フラストレーションが溜まる場合は、どうぞご遠慮なくフォームや掲示板をご利用下さい。
・リアルで安否が心配
ご年配の方々の大往生さえ時に衝撃的なのに、同年代の方の急逝とあればショックも大きいです。
現在のところ、私は致命的な持病を抱えていません。「便りのないのはいい便り」と考えて下さい。
心配して下さるのは、心からありがたいと思っています。
・『春期限定いちごタルト事件』というタイトルは米澤が付けたのか
そうですが?
・グラディウス5は買ったか
八月末日に締切があるって書いたでしょーがッ!
こんなところでしょうか。
ではまた、近いうちに。
(04.08.20)
里帰りしています
こんにちは。米澤です。
里帰りしています。
ところで、実は八月末までに長編を書き上げる約束がありまして、その進捗状況は楽観的とは言い難い状況です。
故郷の図書館が最近改築されまして、開館時間も大幅延長。朝の九時半から夜の九時半まで、PC使用可・作業可・冷房つき・各種資料類完備の快適な環境を提供してくれます。
里帰りというよりも、山ごもりに来ているような気分です。さーあしたも図書館です。
さて、新作についてですが。
東京創元社様と進めている連作短編の発売は、11月頃になりそうです。題は仮に『狐狼の心』と付けていると先に書きましたが、やや固いということで変更になりました。
現在のプロジェクト名は『春期限定いちごタルト事件』です。ほ、本当にこの題名で出るのでしょうか……?
仮題というものはころころ変わるものでして、角川書店様と進めている長編『四人四色学園祭』のPC上でのファイル名は現在『ABCそしてE』となっています。
『四人四色』が趣向に即した題名なら、『ABCそしてE』はミステリ的側面に即した題名です。後者の副題に「秘密のレッスン」とでも付けようものなら、イメージは実にフランス的になります。実際の発売時にどのような題名になっているのか、私自身も楽しみです。
その『四人四色学園祭(仮)』の発売なのですが、どうも年内は難しそうな情勢です。
年初に、「今年は三冊出す」と宣言しましたが、その実現も随分怪しくなってきました。期待して下さっていた方がいらっしゃいましたら申し訳ありません。
代わりに、というわけではありませんが、やはり11月頃にノンシリーズの短編を一つ、雑誌に載せて頂ける見通しが立っています。
ところでこの夏は京都に行ってきました。
まさか、牛若丸で有名な鞍馬山に行って、ブラバッキー夫人の影を見ることになるとは、思いもしませんでした。
ブラバッキー夫人はサナート・クマラなるオカルティックな存在を創造したそうですが、鞍馬(クラマ)がその聖地というのは、その、いささか洒落が過ぎる気がしますが、いかがなものでしょう。
(04.08.11)
サインをしてきました
こんにちは。米澤です。
今回の『さよなら妖精』では既報の通り、サイン本を扱って頂けることになりました。しかし合計すると百冊で済まない本を郵送でやり取りするのは手間ですし、なによりお客様にお届けするのにいらぬ時間がかかってしまいます。そこで、私が上京してサインをすることになりました。
用意されたペンが金色と銀色の二色で、白い紙に銀色で書いてもよく見えないことから、必然的にサインは金色になりました。光っています。なぜ黒はなかったのでしょうか?
出来上がったサイン本の一部は、私と担当氏と営業の方の三人で紀伊国屋書店新宿本店様までえっちらおっちら運びました。私のわかる分ですと、あとは同じく紀伊国屋書店の新宿南店様に置いて頂けるようです。
当日夜、東京創元社様の担当氏と角川書店様の担当氏を交えて宴がありました。興味深いお話がいろいろ伺え、また今回の出版に当たってお世話になった方々にもご挨拶ができ、有意義だったと思います。
帰り際、可愛らしい方から(成人の表現に「可愛らしい」は不適切かもしれません。ここをご覧になっていて、お気に触りましたらすみません)可愛らしいサボテンを頂きました。殺風景な自室の、プリンタの隣に飾ろうと決めました。
翌日、追加で一部の三省堂書店様に置いて頂けることになったサイン本を作成するために東京創元社様を訪れた後、別の出版社の方とお話しする機会がありました。お忙しい中随分長く時間を取って下さったので、ここでもいろいろ興味深い話を伺うことができました。
で、後は帰るだけなのですが。
やってしまいました。
旅の道具と帰りの切符を詰めたリュックサックは、中央線快速に乗ってどこかへ行ってしまいました。さようなら私の「ぷらっとこだま」チケット。さようなら私の万札。「お手回りの品には充分ご注意ください」のアナウンスが虚しくて。24日の午後七時、東京は神田駅で柱に頭をガンガンぶつけていたのが私です。柱に頭をぶつければリュックが戻るものならば、もう百回ぐらいぶつけてもよかったのですが。
そしてなにより、可愛らしいサボテンもその中に入っていたのです。ああ、プリンタの隣に置くはずだった小さなサボテン。贈って下さった方に、なんともお詫びのしようがないことをしてしまいました。連絡先を記した名刺も一緒に持っていかれてしまいましたので、まずはここでお詫び申し上げます。
迂闊な締めくくりをしてしまったものの、成果も多い上京でした。
年頭に宣言しようと思っていたものの、見通しが立たなくて書けなかった言葉が書けそうです。
今年は三冊出します(『さよなら妖精』含めてですが)。
良いものをお届けしたいものです。
(04.07.30)
明けました
こんにちは。米澤です。
年末年始に帰省し、幾人かと旧交を温めてきました。その際、このサイトをよく見ているという知人から「もっと頻繁に更新してはどうかね」と注文を受けました。
頻繁な更新そのものはできないこともないが、新しい情報がなければ内容はせいぜい米沢穂積だと言ったところ、「米沢穂積をもっと頻繁に書いてはどうかと言っているのだ」と言われてしまいました。ぎゃふん。汎夢殿はナンセンスジョークのためのサイトではないのに。多分。
というわけで今回は意地でも普通に近況報告します。
今年は「待たない」をキーワードに、ちょっといろいろ動いてみようかと思っています。
思うのは簡単なことです。悪いことに思うだけで済ますのも簡単なことなので、そうなりがちだという反省の上に立ち、一月分の予定を立ててみました。
・一月二十三日までに、短編を三つ
・一月二十九日までに、長編を半分まで
・一月三十日までに、長編のプロットを一つ
……まあ、予定を立てるのも簡単なことです。立てただけで済まないようにしたいものです。
ちなみにポイントは、このどれも世に出る保証が全く「無い」というところです。良いものが書ければ売りこみもできようというものですから、せいぜい品質向上に努めるつもりです。
年間を通じての目標は、いまのところ立てていません。事態が流動的で先が読めないからです。
読者の皆様にはとりあえず、二月に『さよなら妖精』をお届けします。東京創元社様のサイトの、「
近刊の棚(発売となりましたのでリンク切れです)」に紹介文が掲載されましたので、よろしければご覧下さい。
(04.01.15)