安静です
こんにちは。米澤です。
深夜二時の大病院、明かりが落ちた廊下の先には、誰かの家族が集まっているのが見えました。この時刻に一家揃っているということは、彼らはまもなく、遺族になるのかもしれません。残念なことですが、こればかりは仕方がありません。私もまた遺族ですし、私の家族もまた、私のためにいずれ遺族となります。
名前を呼ばれて、診察室に入りました。やがて私の目の前に、小さな桃色の錠剤が置かれました。深夜当直の女医は言いました。
「この薬は、あなたの五臓六腑を灼きます」
「…………」
「その代わりに、あなたの病を癒すでしょう」
それで話は終わったとばかりに、女医は椅子を回転させ、私に背を向けました。しかし私が立ち去ろうとすると、彼女は確かに、こう言ったようでした。
「安静です」
というわけで、安静を命じられました。病院とは因縁浅からぬ私ですが、安静命令は初めてです。貰った薬を飲んで一日寝ていたら、もう治ったような気がするんですが、せっかくなので安静にしておきます。
いや、ほんとにもう何ともないんですけど……。
(06.06.30)
去年の六月末はSF大会に行っていたんですね。今年も行ってみようと思いましたが、調べてみると満員札止めでした。
講演会に行きました
「講演会に行きました」って、他人事のような題ですな。「講演会をやりました」が正しいのかな。いや、主催は同志社大学ミステリ研究会ですからそれも違う。「講演会に招かれました」……。来賓みたいです。もう少し長くしないと正確に表記できないようです。こんにちは。米澤です。
去る6月17日、京都は同志社大学のミステリ研究会主催で「米澤穂信講演会」が行われました。講演と申しましても大上段にミステリを語る柄ではありませんので、事前に質問を公募し、当日も質問を受け付けるという質問会という形をとりました。
この同志社大学ミステリ研究会主催の講演会は、昨年、入場料を課しても70人以上の聴講者を集めたという実績があるそうです。加えて今回は入場料無料。ビッグネームからは程遠い米澤穂信ですが、どれぐらいの方が来てくださるのか、全く読めないというのが本当のところでした。
ところで私は話が下手でして、どちらかというと聞いている方が得意です。目指すはモモです。知人の前で乾杯の音頭も取れないほど、と言えばどれほど話下手かわかっていただけるでしょうか。知人連中には結婚できない呪いをかけています。スピーチをしたくないからです。
そんな私が何十人かの前で講演会とは、ははは、片腹痛いとはこのことですな。
……前日の打ち合わせは同志社大学の学内食堂で行われました。学内にある食べるところですから学内食堂、学食で間違いないと思うんですが、なんか給仕さんがタキシード着て「ワインはいかがなさいますか」とか訊いてきました。「今日のメインディッシュはうずらをご用意しておりますが、オマール海老かフィレ肉もお出しできます」。うーん。国立大学とは設備が違いますな。
それにしてもさすがは京都。まだ6月だというのに、暑いなんてもんじゃありません。気持ちが楽になる素敵なおくすりを飲んだのに、寝苦しさからその夜は5時まで眠れませんでした。エアコンつければ良かったのに。
当日、司会の方にホテルまで迎えに来ていただき、最終的な打ち合わせを。なにせ最低でも2時間の長丁場です。何があるかわからない。「時間足りません。急いでください」や「体調不良。休憩をお願いします」などの緊急サインを打ち合わせ、立ち位置もきっちり確認し、あとは会場の入りを待つだけとなりました。
とっとと逃げ出して伏見稲荷でも見てこようかと思ったのですが、控え室には常に人がいて、逃がしてくれませんでした。ちぇ。
何十人という人の前でまとまった長さの話をするというのは、思い返せば小学生のとき答辞を読み上げて以来です。まったく、端倪すべからざる運命はどこに落とし穴の口を開けているかわかりませんな! などと思いながら、屠所に曳かれる羊のような気持ちで会場に向かうと、同志社大学ミステリ研究会運営スタッフの皆様がそろって笑顔でした。
無料とはいえ、天候不順の中、聴講者はなんと170人に上ったそうです。運営側としてはこの時点で8割方大成功と言えるでしょう。ありがたいことですが、私の仕事はこれからです。こりゃどうしたものかな、と緊張がレッドゾーンまで高まりました。逃げ道は一つ、窓だけでしたが、講演会会場は四階。人生の電源ボタンを押すのはいまか? と悩んでいる間に、鉄扉が開かれ会場が眼前に広がりました。
講演会に使われたのは200人以上を収容できる大教室だったのですが……。満員御礼でした。
170人の聴講者を前にして、私が何を思ったか。
ああ、私はこれから彼らの前で、エンタテイメントを演じるんだな、と実感しました。
そして実は、その瞬間、私はすっと落ち着いたのです。
この170人は、99%までが私の読者でしょう。
読者の前で、ミステリをネタに真剣勝負をする……。
私は失笑しました。緊張するまでもない。なんだ、いつもやってることじゃないか、と。
「では、どうぞ」との司会の声に合わせ、私は会場に入りました。
私の仕事は小説であって、話がうまけりゃ噺家になってます、と前置きし、米澤穂信講演会が始まりました。
ええと、当日の補足・訂正を。
好きなライトノベルは、とは訊かれるかもしれないと準備をしていましたが、好きな漫画は、と訊かれたのは予想外でした。充分なお答えができずすみません。会場でお答えしたものの他に、『宗像教授伝奇考(星野之宣)』『Spirit of Wonder(鶴田謙二)』『気分はもう戦争(矢作俊彦・大友克洋)』を加えておきます。大体私は漫画の、売り上げの都合で終わるべきところで終われなかったり、終わるべきでないところで終わったりするところが良くないと思っています。物語には最適な長さがあり、それを逃がせばろくなことにはならない……。その点、作中の時間と実時間を合わせ、雑誌を支えられるほどの大人気だったにもかかわらず3年間で終わった『あずまんが大王(あずまきよひこ)』は、作者はもちろん編集者が凄まじいと思います。
好きなコンシューマゲームは、とは訊かれるかもしれないと準備をしていましたが、『ぐわんげ』『ダライアス外伝』についてコメントを、と訊かれたのは予想外でした。充分なお答えができずすみません。『ぐわんげ』の全回復の出現条件を「大蜘蛛を6体連続で倒すこと」と言いましたが、正確には「10体」のようです。まあ、式神を画面上部に貼りつけておけばそのうち自然に出てきます。『ダラ外』の最易ルートはA→B→E→H→L→Q→Vです。それと、せっかくミステリ関係で関西に行ったんですから、『逆転裁判』も好きですよと言おうと思っていて忘れていました。やっぱりちょっと緊張していたんでしょうかね。
ちなみにアーケードで1コインALLできるシューティングはまだありますが、それはちょっと大勢の人の前では挙げられませんでした。ほら、あれですよ。ロードとかスプライトとかメモリーとかが出てくるやつです。
あ、当日はちゃんと、ミステリの話がメインでしたよ。上の補足だけ読むと「何の話だったんだ」と思われてしまいそうですが。
一つ惜しむらくは、サイン会です。講演の後でサインをさせてもらったんですが、昨年の(へとへとになった)紀伊国屋新宿南店さんでのサイン会でも参加者は70人ほどだったのに対し、今回は170人! 全員が全員希望されたわけではないとはいえ、100人を下ることはなかったでしょう。2時間の講演に比して、サイン会は2時間半の長丁場となりました。
読者の皆様の前で集中を切らすようなことはしなかった、と言いたいところですが、最後の方はやや生硬い対応になってしまったやもしれません。どうか、ご容赦いただければと思います。
それにしても総じて、聴講者の皆さんに助けられたな、と思った一日でした。質問の時間が長いということで、あるいは吊るし上げめいたムードになりはしないかと危ぶんでいたのですが、最後まで和やかな雰囲気が崩れることはありませんでした。
つくづく思うのですが、私は本当にいい読者に恵まれています。感謝の気持ちをここでくだくだしく述べるより、より楽しんでいただけるものを書くことで謝辞に代えるのが、本道でしょうね。
まあ、とはいえ、お礼はお礼としてきっちりと。
ご来場の皆様、そして同志社大学ミステリ研究会の皆様。ありがとうございました。
(06.06.20)
書き込みました
先日、打ち合わせの電話の際、大変シッケーなことを言われてしまいましたので、私は憤慨のあまりこう言いました。
「こんなに誠意に満ちた私に何てことをおっしゃるんですか!」
すると先方はきょとんとした声で、
「米澤さん、何をおっしゃっているのかよくわからないんですが、その『セイイ』ってどういう漢字を書く『セイイ』ですか?」
「え? えっと、え……」
「え?」
「夷を……、征する?」
こんにちは。誠意の人、米澤です。
選挙演説めいた胡散臭さが拭えません。
ちょっとゲーム方面の話をしますので、興味のない方はスルーしてください。
初出はセガサターン、その後アレンジバージョンや続編、外伝がプレイステーション、ドリームキャスト、プレイステーション2、携帯アプリで出ている『カルドセプト』というゲームがあります。その攻略サイトのBBSで先日、事実上のサイト管理人さんがこんな書き込みをされました。
「ところで話は変わるが『春期限定いちごタルト事件』と『夏期限定トロピカルパフェ事件』が面白かった(大意)」
訪問頻度に多寡はあれど、数年間見ている(小説とは基本的に関係のない)サイトでいきなり自作の名前を見るとは大変に意外で、しかも『夏期限定トロピカルパフェ事件』にはこっそり『カルドセプト』の用語を紛れ込ませていたこともありまして、思わず先方の掲示板に書き込みをしてしまいました。
自分の掲示板以外の掲示板に書き込みをするなんて、何年ぶりでしょう。「掲示板」という存在そのものが、現在の標準的なサイト運営形態では時代遅れになりつつあるのは確かですが、それにしても久しぶりです。
(サイト運営における掲示板形式の衰退ということについてもう少し書きますと、宣伝書き込みを防ぎにくいというのも理由でしょうね。私のサイトの掲示板も、最近宣伝書き込みが増えました。なぜか大阪の業者ばっかりなんですが。
24時間の監視はできませんし、掲示板の管理にばかり神経と時間を費やしてもいられません。とはいえ、中学生ぐらいの読者もいらっしゃる掲示板で、アダルトサイトの宣伝書き込みの氾濫を許すわけにもいかない。充分な管理ができないぐらいなら、いっそ閉鎖も考えています。web拍手という形態もありますし。
閉鎖を決めましたら、あらかじめ告知いたします)。
久しぶりだから、と言い訳するのではありませんが、書き込みの際ちょっといくつか書き落としてしまったことがあります。それも主旨にあたる部分を。
先方の掲示板はサイト運営の連絡が主眼の場所ですので、私が長居するのも筋が違うと思い、追記はこの場でさせていただきます。
読んでくださってありがとうございました。とても、嬉しかったです。
ところで、書き込みの際に私は「新作が出たらお手合わせを願います」と書いてしまいました(今度、オンライン対戦機能のついた新作が出るのです)。
しかしその掲示板の管理人さんは、北海道大会を主催する大変な強豪。その後レスをつけてくださった方は、全国大会で優勝の経験もお持ちです(氏が中心となった掲示板ログ「妨害論」は、別の方が著された「アレス論」と並んで、カルドセプトプレイヤー必読の一文だと思います。「走っていれば勝てる」という単純なゲーム観をひっくり返してくれます)。
一方の私は、いつもひとり。ずっとひとり。対人戦の経験など、ろくすっぽありゃしません。
ええと、言い換えさせてください。
新作が出たら、胸を借してください。
いまだに時々リンクが張られる「
秘密結社です」以来のゲーム系近況報告でした。
(06.05.30)
『夏期限定トロピカルパフェ事件』サイン会を行いました
先日、吉祥寺のミステリ専門書店
TRICK+TRAPでサイン会を開かせていただくことになった経緯は、
お知らせで書きました通りです。そして、無事にサイン会を終えることができたのですが……。
その晩から、数社の編集者さんから立て続けにメールをいただきました。「サイン会ではお世話になりました」「いえいえこちらこそありがとうございました」という、まあ普通のご挨拶なのですが。
……ほぼ例外なく、触れられているタームが。
『ジャケット、お似合いでしたよ』
『ジャケット、素敵でした』
『ジャケット、なかなか格好よいのでは』
フォローのポイントが全員一緒か……。
サイン会とジャケットにいかなる関係があるのか、少し述懐してみます。
サイン会は五月のゴールデンウィーク最終日。ちょっと早めに現場入りした私は、用意していただいたアイスコーヒーを飲みながら、サインの手順を確認していました。さほど複雑なことをするわけではないのですが、人の動線はしっかり把握しておかないと混乱を招きますので。
今回のサイン会には遠方からも幾人かが来て下さるということは、あらかじめ聞いていました。しかし私はその場で、自分の勘違いを知りました。TRICK+TRAPの方からは「福岡からおいでになる方もいらっしゃる」と聞いていましたのに、私はなぜか「福島から」だと思っていたのです。福島から東京でも確かに遠方からのご参加ということになりますが、福岡からというのはその比ではありません。GWということで、他の目的があって東京で遊んだ末のサイン会参加ということでしたらいいのですが、もし米澤サイン会のためだけに福岡からということだと……、と、身の引き締まる思いでした(実際には、もっと遠方からのお客様もいらしたのです!)。
当日は天気が心配されました。気象庁の予報では、前日までの晴れが一転、豪雨にもなるということだったからです。
ですが実際は、いいとこ驟雨。足元が悪かったことは確かですが、大雨の中のイベントということにならずに済んだのはせめて幸いでした。
サイン会が始まってしばらくは、割と粛々としたムードでした。まあ、最初からハイテンションなサイン会というのもあまり聞きませんから……。サインに加え一問一答、ぐらいの感じで、それでも中には大変嬉しそうにしてくださるお客様もいらっしゃり、私もそういう時は来ていただいた甲斐を作れたのかなとほっとしておりました。
ただ、申し訳なかったのが、サイン会定番の握手について。私はサイン会前日まで割と切羽詰っておりまして、その不眠がひどい手荒れになって出ていたのです。握手を申し出てくださるお客様には手荒れのことを説明しましたが、それでも構わないとおっしゃってくださるお客様が多かったこと、嬉しく思っておりました。
さて、そんな牧歌的な、普通のサイン会の様相が変わり始めたのは開始一時間後ぐらい。
いらっしゃったお客様の一人、手に拳ダコはないもののきっと空手か何かをなさっているだろう女性の方が、私を指差さんばかりにして言い放ったのです。
「あ。米澤くんホストみたい」
なっ。
なんですと?
当日の私の服装は、黒のフェイクレザーのパンツに同じく黒のカットソー。そして、白いジャケットを羽織っておりました。
途端に流れる不穏な空気。
……後日、担当編集者氏はこう語りました。
「あの時、『ああ、桜庭さん、言っちゃった』と思いました」
と。
要するに、黒に合わせたのが2ボタンの白ジャケットだったのが原因らしい。そんなこと知らんわー。
「ネックレスがあれば完璧」だとか「あの頃の純だった米澤くんはどこに」だとか「カステラハーレムを狙ってるんですよこの人は!」だとかのたまった末に、いつの間にかそのお客様は私の隣に座っておられました。あの、そこはサインを書くために本を広げたとき、本を押さえる係りの方が座るところ……。ま、まあ、今回は文庫本なのでその係りの出番がなかったことは確かなんですが。
この辺りからサイン会の空気も緩やかなものとなりまして。
本にサインを終えた後も、帰ろうとするお客様に「まあ、次の方もいませんから少しごゆっくりなさいませんか」と席を勧めてみたり、小説家を志しているんですがどうしたらいいでしょうといった相談にちょっとお答えしてみたりと、割と時間を使ったイベントとなりました。
予報ほどではなかったとはいえ悪天候で、予定よりも参加人数が少なかったことも、時間に余裕を持たせる一因となったのでしょう。
私は口が下手なので、お話しさせていただいたお客様に楽しんでいただけたかどうか不安なところもありますが、私自身は楽しいイベントでした。
なお、私をホスト風と指弾した件のお客様は、終盤は本棚を物色してました。
帰り際、「交通費5万円かかったけど、3万円分くらいはからかったかな」と呟いておられたのが印象的でした。
でも、そのお言葉には反論させていただきます。
あんたは別に私のサイン会のために東京来たんちゃうやん。
サイン会後、編集者さんから届くメールにジャケットの文字が目立つようになった顛末は以上の通りです。
ホスト風はともかく、いいイベントにしてくださったTRICK+TRAPのスタッフの皆様に改めてお礼申し上げます。
そして、多くのお客様のご参加にも心からの感謝を。遠くからお越しくださった方も、近くからのご参加の方も、ありがとうございました。
(06.05.20)
カステラ事件です
恩のある方にお会いして、お食事をご一緒することになりました。
私はその方に本当に恩を感じているのですが、口下手な私のこと、どうもその感謝の気持ちを上手く伝えられているように思えません。
こういうときは喩え話が一番だ、とふと思いつきました。
「私はあなたに、川路利良が西郷隆盛に感じていたのと同じぐらい深く恩を感じています」
川路利良は明治時代のひとで、現在で言う警視総監でした。あまり身分の高くなかった彼を引き上げたのが西郷です。
するとその方は、少し考えて言いました。
「米澤さんのお気持ちはよくわかりました。後で裏切るつもりですね」
しまったこのひと私より歴史に詳しいんだった。
こんにちは。米澤です。
さて、陰謀渦巻くミステリ界。最近、その片隅の端っこの僻地を激震させる恐ろしい噂が流れておりました。
発端は、一本の電話でした。
ある編集者さんからのお電話。ごくありきたりなやり取りをしばらく交わした後、その爆弾が落とされました。
「ところで米澤さん」
「はい」
「米澤さんは異性と見るやカステラを贈りつけるそうですね」
えっ。
た、確かにカステラを贈ったことは複数回あります。その相手のほとんどが異性だったのも事実です。
ですがそれは、単に出版関係における男女比が原因であって、贈ったと言いましても社会的通念に照らして当然成されるべきお返しとしてお贈りしたわけですし、何もむやみやたらに贈りまくったわけでは……。
っていうか何なんだその噂はッ!
「だ、誰から聞いたんですかそんな話を」
いささか慌て気味のその質問に、私の狼狽を嗅ぎ取ったのか、その編集者さんはそらっとぼけました。
「さあ……。誰でしたかねえ」
「それは著しく事実に反しています! ちゃんと思い出してください」
「そう言われましてもねえ。ああそうだ、この間の○○社のパーティーで聞いたんでした」
パーティーの席で肴にされたのか……。
これは黙ってはいられません。あらぬ噂を振り払い、濡れ衣を晴らすためにも、噂の主を突き止めねば。
そして私の、孤独でつらい戦いが始まりました。
まずは聞き込みを(略)まさか、ここまで広範囲に(略)「米澤くん。正直どうかと思うよ」「いえ、ですからそれはッ!」(略)もう少しというところで、まさかこんな手を(略)「よ、米さん……。ダメだよ、やつら、底が知れねえ……。もう少し、もう少しだと思ったのに、上っ面を撫でただけたあ……。かなわねえよ、くやしいなぁ」「もう喋るな、くそっ、救急車はまだ(略)日持ちしなければ贈れない。美味しくなければ、贈る資格がない(略)「手を引きたまえ。米澤はカステラが好き。それでいいじゃないか」「あなたにもわかっているはずだ。私は確かにカステラが好きかもしれない。だけど本当に好きなのは(略)「なぜカステラだとわかったのかね」「他のものではないとわかったからです」(略)これから私はカステラを贈る。ウオッホォン!(略)さらに、あるものは美しくもなく、神聖でもなく、また善でもないかわりにカステラではありうるということ、いな、それがカステラでありうるのはむしろそれが美しくも、神聖でも、また善でもないからこそであるということ、――これはこんにちむしろ常識に属する(略)ここが王座ですって? ここはお店よ。カステラとどら焼きの(略)貴様ッ! 文明堂の手の者かっ!(略)カステラ好きって地獄だよね(略)カステラは旨く、抹茶カステラもまた旨かった。カステラのかけらは甘いのに、私の気分は苦かった(略)「やはり、君は幼い……。その無垢な心が羨ましい……。自らの手を汚してでもカステラを贈る……。それができなければ戦いに参加してはいけない……。いけないんだよッ!」(略)大胆な想像だ! 大胆な想像が当たったよ!(略)そうだ、カステラはタテマエだ。そして、タテマエのために贈るのがカステラというものだ!(略)この先ワシは、ずっと悩んで暮らすことじゃろう。ワシが運んだバスケットには、抹茶カステラが入っていたのではなかったか、とな(略)九日もの日を保たせるのは容易ではない。まして生菓子ならなおさらだ(略)自分が世間に捧げようとするものに比べて、現実の世の中が――自分の立場から見て――どんなに愚かであり卑俗であっても、断じて挫けない人間。どんな事態に直面しても「それにもかかわらず!」と言い切る自信のある人間。そういう人間だけがカステラへの「天職」を持つ(略)「米澤さんのご実家は、カステラ屋さんなんですよね」って伝言ゲームかよ
そして私はとうとう、噂の発信源をつきとめました。
直接顔を合わせるのはあまりに危うい。私はその元凶と、電話回線を挟んで通信しました。
「だって、贈ったじゃないですか」
「あれはただのお歳暮のお返しです」
「じゃあ、許してあげます」
一件落着。
……ところで。
何か、許されなければならないような罪を、私は犯したのでしょうか……?
(06.04.30)
見ませんでした
こんにちは。米澤です。
花を見たかった。
花を見たかったんです。
花を見ると決めていたので、
小石川後楽園に行ってきました。
しかし梅は言うまでもなく、
桜もとうに終わっておりまして、
そして藤の花はまだ咲いていませんでした。
新緑から少しずつ、
緑は濃くなっているようでした。
でも、花は咲いていませんでした。
私は帰り道、飯田橋職業安定所の前で五分ほど立ち止まって、ぼうっとその看板を見上げておりました。
ハローワーク、って面白い言葉ですよね……。
(06.04.20)
10日分の更新、遅れましたが済ませました。よろしければこの下もご覧ください。
驚きました
こんにちは。米澤です。
驚きました。
風邪で話題にするのが遅れ、もう随分皆さんの記憶も薄れているのではと思いますが、WBCのことですよ。
いくら一度勝っている相手だからといっても、過去の実績を考えれば日本人の不利は否めないんじゃないかなと思っていました。実際、序盤から押し気味だったといっても7回ぐらいから相手も盛り返し、これはまずいんじゃと気を揉んでいました。世界戦の経験から言えば、まあ比較にならないぐらいですからね。
ところが、あの9回です。鮮やかなとどめの一発。かつての不動の世界王者を、完璧に葬り去る一発でした。まったく今更なんですが、プロ選手の運動能力というものは常人には計り知れないものがあると、改めて思い知りました。
いやあ、出来ることなら実際に見にいきたかった。
でも、まあ、遠いですからねえ。神戸は。
そして、驚いたと言えば
これです。
何に一番驚いたかと言いますと……。
私に事前連絡がなかったということです!
そりゃ四月馬鹿もびっくりです。
どうやら合計で五人ほどこの悪戯に関わっていたようですが、全員連絡を忘れていたというこの現実。現実というより新現実と言いたいほど信じがたいことです。後で「ごめーん」と言われましたが。
きっと、あれです。「米澤なら怒らないだろう」と思われていたに違いありません。ええい、おのれ、甘く見おって。この原著作権者の印籠が目に入らぬか!
ま、実際、笑い転げてただけなんですけど。
むしろ驚いて楽しめたのがお得。
(06.04.10)
「WBC」は「World Boxing Council」の略です。
こんな感じで。
爆弾です
こんにちは。米澤です。
先日、ある繁華街に知人を尋ねました。知人は販売員をしているのですが、ちょうど昼休みの時間ということで一緒に昼を食べることになりました。
あまり時間がありませんし、私にはその地域の土地鑑がありませんのでコンビニ弁当のようなもので簡単に済ませ、余った時間は街角のベンチで近況を語り合ったりなどしながら過ごすことにしました。
しばらく話した後のこと。私たちが座っていたベンチの後方から、突然大きな音がしました。どうやらマイクテストのようです。私たちの背後には、まだオープンしていない大きな商業ビルが建っていたのです。知人が言いました。
「ああ、明日がオープニングセレモニーだったな」
真新しいビルを見上げ、大変眩しく感じながら、私が言いました。
「……爆弾を仕掛けてやりたいな。
といっても高校生みたいに破壊衝動に拠ってじゃなく、大学生みたいに政治主張に拠ってでもなく。怪我人が出ないよう、花火程度で音だけ派手なやつを、二つ。
このクラスのビルなら、オープニングセレモニーも壮大だろうな。きっと、建材を提供したとか何とかで、九州とかから小さな会社の社長の山田さんも招かれたりしてるんだ。山田さんの会社は小さいから毎日忙しくてさ。きっと一週間も前から家族とかの前で愚痴ってるんだ。『この忙しいのに、日帰りで東京出張だ。しかしまあ、これも付き合い、これも仕事のうちだからなあ』。
でも山田さんも実はちょっと、迷惑が八割としたら残りの二割ぐらい、セレモニーを楽しみにしてるんだ。人間誰しも、ご来賓として招かれて嫌な気はしない。家でも職場でも今度の出張は顔を出すだけなのにとんだ出費だとかぶちぶち言いながら、一張羅のスーツをクリーニングに出したりしてるんだ。
で、明日、のぞみではるばるやって来た山田さんは、いろんな人に気を遣って挨拶してまわって、時間が迫ったら胸に白薔薇なんかつけてパイプ椅子の来賓席のいっちばん隅っこに座るんだ。やっぱり俺なんかいてもいなくてもいいようなもんだなと思いながら、自分の会社の仕事がこのビルには不可欠だったと思えばやっぱり誇らしくも思うんだ。ついでに、テレビ局も入ってるしね。しゃちほこばったりしてさ。自分は列に加われないけど、やっぱりテープカットにはわくわくしてるんだ。
そこで、爆弾を爆発させる。子供の悪戯程度の、ぽーんってやつを。どんなに小さくても式は中断される。警備員が周囲のチェックをし始めたところで二つ目を起爆する。こうなるともう駄目だ。セレモニーは順延。でも九州から来た山田さんは、明日も小口ながら大事な仕事があるから帰らないといけない。八割迷惑二割楽しみだったのが、帰りののぞみでは『俺は何のためにわざわざ……』『やっぱりろくなことには……』と何度も自問自答しながら、二割楽しみにしてた自分を思い出しては苛立ったり恥じたりするんだ。ぴしっとのりの利いたスーツに身を包んだ自分の姿を、のぞみの窓に映しながらむなしく帰っていくんだよ。
……その失望の顔を想像したいから、爆弾を仕掛けてやりたいな」
知人は私の顔をまじまじと見ると、言いました。
「米さん」
「…………」
「帰って、寝れ」
帰って寝ることにしました。
おやすみなさい。
(06.03.30)
花を見たい。花を見にいくんだ。
ひっしです
「必死です」だと「いますっげー頑張ってます」という意味になりますが、「必至です」だと「もうどうにもなりません」という意味になります。日本語ステキ♪ こんにちは。米澤です。
はてなダイアリーの
ここがおかしいです。いえ、誰かが親切で登録してくださったのでしょうけど、私だけて。
若い人に限っても小川一水氏がそうですし、中村航氏がそうですし、確か冲方丁氏もそうだったと思いますし、何より奥田英朗氏が真っ先に上がるでしょう。
小説家以外では、たとえばMr.マリックや清水ミチコ氏、熊田曜子氏はテレビを見ない私でも知ってます。あとは……、えっと、濃姫とか?
ああそうだ、それとあれだ、忘れちゃいけません、大野伴睦。『バンボクは新幹線を曲げなかったか?』とか書くと何だか社会派っぽい雰囲気です。鉄の人以外には多分全然知られてない名前だと思いますが。
しかしわざわざはてな市民になってまで加筆する気にはなれません。
まぁ、そのうち誰かやるでしょー。
自分以外の誰かが正確性・客観性・公平性を保障しデータベースの価値を上げてくれる、そう信じて寝っ転がって煎餅かじってる瞬間がインターネットの醍醐味ですよねー。
……すいません、やさぐれてて。
えっと、『夏期限定トロピカルパフェ事件』ですが、来月10日発売という話が聞こえてきました。遅くても14日です。書籍の発売日はなかなか「正確なところ」がお伝えしにくいのですが、表紙の画像が届きましたらそれと一緒に「お知らせ」の頁を更新します。
(06.03.20)
うわ、上で挙げた名前がほとんど登録されています(更新した時点では、私の名前しか挙げられていなかったのです)。
ここを見て登録してくださった方がいらっしゃるようです。まさか本当に誰かがやってくれるとは思いませんでした。インターネットはフリーライドが醍醐味ですが、ギブアンドテイクがマナーと心得ています。どこかで、wikiの更新にでも協力しておくとしましょう。
(06.03.22追記)
川柳です
「ギブアップ」打ちかけ止まるメールかな
「とまる」ではなく「やめる」の方が「まだ戦える!」という意思が出ていじましいですが……。さてどっちにしたもんでしょう。こんにちは。米澤です。
書きかけの原稿を知人Aに見てもらいました。
「ちょっと村上春樹っぽい気がする」
と言われました。
それ単体では別に褒め言葉でも貶し言葉でもありませんし、意外な名前が出てきたなと思いこそすれ特にどうこうとは思いませんでした。
知人Bに、知人Aに「春樹っぽい」と言われたことを話しました。すると知人Bはしきりに首を捻っていました。
他の話題がしばらく続き、途切れたところで「ところでさっきの話なんだけど……」と言うことには。
「俺、米さんの小説、別に角川春樹に似てると思わんけどなあ」
そりゃそうでしょう。
……そりゃ、そうでしょうとも。
(06.03.10)
切り札です
道を歩いていたらすれ違いざまに女性に「つまりあんたはやる気がないんだよ」と言われてしまいました。こんにちは。米澤です。どうやら独り言だったようですが、なんとも心臓に悪い。思わず「そ、そんなことは……!」と反論してしまいました。
逆転の切り札。それは「生活の停止」です。
具体的には宿を取って三食
昼寝つきでこもります。
カンヅメといいます。
多くの巨匠がカンヅメを行い、多くの傑作がそこから生み出されました。
しかしカンヅメを行う者の全てが巨匠というわけではなく、カンヅメから生み出されるものが全て傑作というわけでもないことには注意すべきです。
宿を取ってこもるので連絡途絶します、とある編集者さんに連絡差し上げたところ、どこに逗留するのかと訊かれました。
「奥飛騨温泉郷に」
「なんだ。湯治ですか」
ち、ちが……
「いえ、割と必死です」
「そうですか。それはすみませんでした」
「どういたしまして。では例の件は打ち合わせ通りにお願いします」
「わかりました。何かありましたらご連絡します」
「では失礼します」
「失礼します。……米澤さん」
「はい?」
「いい骨休めになるといいですね」
だから……!
温泉宿を取ったのが失敗でした。
誰も本気にしてくれません。
でも私は行きます。
行きますとも!
(06.02.20)
スタイルシートのせいで、打ち消し線(こういうの)が見づらいですね。
そのため、「昼寝」の文字が打ち消されているように見えません。これは大変なことですよ。
準備しています
鶏の腿肉を二枚買って、味噌煮込みうどんと親子丼と水炊きにして食べました。こんにちは。米澤です。私は生活しています。
生活のひとコマその一。
部屋の窓の桟の内側に、古い血痕らしき赤い染みを見つけました。
高さはおよそ私の目の高さぐらい。もしこれが血痕であれば、飛び散った血を拭き取るか、壁紙を貼りなおすなどして覆い隠したものの、桟の内側という見えづらい場所に着いた血には気づかなかったものと思われます。
…………。
ス、スリーピング・マーダー(いえ、私には心あたりはありませんが)?
生活のひとコマその二。
「米澤さん。
TOKIAに入ってるインディアンカレーは、一度は食べておくべきですよ」
「はあ」
「人として」
「えっ?」
というわけで純朴な私はTOKIAまで出かけてきました。ところで最近自分のことを純朴と評しましたら「『純朴』には『悪辣』という意味はありません」と言われてしまいました。いやだなあ、わかってますよそれぐらい。
インディアンカレーには確かに強烈な個性がありました。これはなるほど、はまる人ははまるでしょうね。私も通いたいですが、さすがに丸の内は遠い。機会があれば、是非とは思いますが。
生活の一コマその三。
知人と電話で話した翌日、掃除をしていたら電話線が抜けているのを見つけました。
…………。
?
昨日のあれは誰?
生活の一コマその四。
仕事の進捗状況が過去に類例を見ないヤバさになっています。
ここで逆転の切り札を。
切り札の発動はもう少し先ですが、準備は進めています。
場にカードを一枚伏せて、ターンエンドです。
(06.02.10)
東京創元社さんと進めている『夏期限定トロピカルパフェ事件』ですが、発売は四月になりそうです。待ってくださっている方、申し訳ありません。
買い支えます
こんにちは。米澤です。
年明け仕事始めが今月五日ぐらい、そこから年始挨拶のメールをやり取りしまして、「挨拶がてら今年の仕事についてご相談を」と話がまとまるのが十日前後。二十日ぐらいから実際に打ち合わせを始めまして、毎年恒例の角川新春感謝会にもお邪魔して、ふと気がついたらもう三十日です。
しゃ、洒落にならん。去年の十一月〜十二月はかなり危険でしたが、今年もいきなりデッドリーです。こんなLiving on the edgeな暮らしはいかがなものかと思います。私はもともと暢気者なのです。多分。
そういえば角川新春感謝会で初対面の方に「あ、天然さんですね」と声をかけられました。何だったんだろう。そもそも当たってるのか、それは?
古い知人から電話をもらいまして。ふとしたことから、テレビアニメ『蟲師』の話になりました。
いろんなオタカルチャーの周辺をうろうろしている私ですが、実はアニメはほとんど見ません。テレビをつけて放映していれば見ることもありますが、あんまりテレビ見ませんからね、そもそも。
ただ、
「『蟲師』はいいね。アニメになって、動いて声がついて、『あ、良かったな』と思えるよ」
すると、深刻な声が返ってきました。
「それは稀有な例だよ。米さんはあんまアニメ見ないからわかんないだろうけど、たとえば『砂(略)』は……」
「ははあ。そういえば通りすがりにパッケージを見て思ったんだが、『戦(略)雪(略)』もだいぶイメージは変えてあるみたいだったなあ。良し悪しまではわからんが」
その後、いくつか教育的な言辞をもらいましたがそれはともかく。
「とにかく、あれはいいね」
「米さん、あれのDVDが出るんだけど」
「へえ」
「あれほどの作画にどれほどの金がかかるものか……。買い支えると思って、買わない?」
DVD……。
いや、確かに映像も、漆原友紀の原作を生かした脚本も素敵だとは思いましたが、私が映像メディアを購入したところで複数回消費するとは思えません。
その旨、彼に伝えようとしたのですが。
「だけどさ、あんまり……」
「買い支えるんだ!」
「いや、どっちかって言うと……」
「買い支えるんだ!」
「ほらさ……」
「買い支えるんだ!」
「…………」
「買い支えるんだ!」
「買い支えるんだ!」
買い支えることになりました。
ところで友よ。アニメってどこに売ってあるんだろう?
とりあえず本屋に行きましたが見当たりませんでしたので本を買いこんできました。へえ、A・B・コックスって本名なんだ。A・B・Cって駄洒落かと思ってましたよ。
(06.01.30)
打ち合わせで某市街地に出向いた際、どこに売ってあったとしてもここに売ってないことはないだろうと主にアニメグッズなどを扱う店に踏み込んできました。が、答えは「売り切れ 再入荷未定」。
売れてるじゃん。
買い支えなければならないという使命感は完全に減退しましたが、買えなかったとなると購買意欲が幾分か増してしまうこの幼児性(もしくは古本魂?)をいかにせん。
コンビネーションです
こんにちは。米澤です。
昨年末、本来ならもっと早く仕上げるべきだった原稿を遅らせてしまい、編集者の方にご迷惑をおかけしました。ところが、多分内心はお困りだったでしょうに、編集者さんは大変温かく私を励ましてくださいました。その励ましに支えられ、私は何とかデッドラインぎりぎりで原稿を仕上げることが出来ました。
さて、原稿をお届けしてから数日後。校正の件で、その編集者さんとお話しする機会がありました。
校正に思ったより時間がかかりそうだと伝えられた私は、ちょっと申し訳ない気分になりました。世の中にはほとんど校正を必要としない完璧な原稿を書く作家さんもいらっしゃると聞いているからです(Y.T氏とK.K氏が特に綺麗だとか)。
それに比べれば私の原稿は毎度割と修正が多く、校正さんにはご迷惑をおかけしているのです。電話口で、私は思わず言いました。
「すいません、校正に時間がかかるような原稿をお渡ししまして」
しかし編集者さんはとてもご親切に言ってくださいました。
「いえ、そんなことはお気になさる必要はありませんよ」
「はい」
そして付け加えて一言。
「……そこを気にするよりも、もっと早く原稿が仕上がらなかったことを気にするべきですね」
ぐはっ。
の、喉元過ぎて熱さを忘れたころに、見事な一撃です。打ち終わりに合わせた見事なカウンター。ぐらりと来ました。
さらに数日後。
別の出版社の編集者さんからお電話をいただきました。
どうやらこのサイトをご覧になっていたようで、一通りの挨拶が済んだ後、おもむろに言われました。
「
一仕事終わった、と書かれていましたが」
「はい」
「もしかして、うちの原稿ですか?」
がはっ。
そ、そうなのです、着手した順番から行きますと実はこちらの方が先に仕上がらないとおかしいのです。しかしまさか、サイトのほんの一言の記述から不義理があからさまになってしまうとは。すいませんすいませんと連呼しながら、思わず電話機の前で正座してしまいました。
真正面からのストレート。避けようがありません。
さらにさらに数日後。
また別の出版社の編集者(女性)さんと、これはごく和やかに平和的に食事をしておりました。
話が雑誌に載った私の写真のことに及びまして、私は苦笑いしながら言いました。
「いや、別に顔で売る商売じゃありませんから美男である必要は全然ないんですが、写真で見ると結構顔が丸かったですねー」
「そうですか? 丸いというほどじゃないと思いますが」
「そりゃ、○○さんはスレンダーでいらっしゃるから」
途端、編集者さんは大変ほがらかな笑顔を浮かべました。
「ははは、米澤さん」
「はい」
「そういうこと言ってると刺しますよ」
え、なんで、どうしてそんな……。
この後、事態はさらにとんでもない方向に!
強烈なのを三つもらいまして、最近対人恐怖症気味の米澤です。
どちらさまも、今後ともよろしくお願いいたします。
(06.01.20)
明けました
こんにちは。米澤です。
年末年始の山篭りから戻って来ました。今年は大雪害でそりゃもうえらいことでした。
雪害と言いますと、私の育ったあたりでは昭和56年の「五六(ゴーロク)豪雪」が伝説として語り継がれています。その前になりますと昭和38年「三八(サンパチ)豪雪」まで遡ります。
しかし、これらは「五六」「三八」という呼称からわかりますように、昭和56年なり38年なりの
年明けから降ったものなのです。
降雪地帯にお住まいの方には常識でしょうが、雪は主に一月と二月に降るもので、年末の一二月にドカ雪が降るということはあまりありません。
つまり、です。本格的な降雪シーズンは(例年の傾向によれば)これからということです。
……がんばれー……
なお、今年の豪雪に呼称をつけるとなりますと、平成17〜18年にかけての豪雪ですから単純に「一七」とか「一八」とかいうわけにはいきません。「七八豪雪」か、それとも西暦表記で……。
あれ? 西暦表記だと「五六豪雪」になりますね。フシギフシギ。
さて、昨年分の最後の更新で、今年が岐路になると書きました。
私も気合充分です。初詣の帰り、今年一年の傾向を占うべく、おみくじを引くことにしました。
どれどれ……。
末吉でした。
あ、あまりよくありませんね。
しかし、ですが、これは故郷で引いたくじです。私は現在別の場所に住んでいますので、そちらで引いたくじが本命ということになります。いまのは練習です、練習。
戻ってから、近所の稲荷に参拝に行きまして、今度こそと念を込めてくじを引きました。
凶でした。
凶!? あれですか、もしかして、「吉凶を占う」という慣用句の、悪い方? え、本当に入ってるんだ! すごいなぁ!
ちなみに、おみくじはもちろん最初に引いた一回が本命です。二回目以降はお遊びです、お遊び。
その後、新年最初の仕事で米澤はとんでもない失敗をしでかしてしまい、ああ本当に末吉であることよなあと慨嘆することになるのですが、それはまた別の物語。別の機会にお話しすることにいたしましょう。
ああ、そうだ。忘れていました。
今年最初の出版は東京創元社から『夏期限定トロピカルパフェ事件』。文庫判です。出版は三月を目処に作業を進めています。
どうぞよろしくお願いいたします。
凶、かぁ……
(06.01.10)
その後、洗濯機が故障し、ガスファンヒーターがガス漏れを起こしました。yeah。