2006年後半
ダメダメです
思い違いです
料理中です
構想です
思い出します
『ボトルネック』サイン会を行いました
鍵を買いました
歪みます
講演会に行きました
神は存在します
こもります
うちあわせます
うるうです
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うるうです
 こんにちは。米澤です。

 主として農業のためであったのでしょうけれど、政治のためにも、また呪術的理由からも、人類は多くの暦を作ってきました。
 現在私たちが使っているのはグレゴリオ暦ですが、いうまでもなくこれは自然が生み出したものではなく、人類があくまで自分たちの便利に適うように作り上げたものです。正しいとか間違っているとか、そういう価値観が当てはまるものではありません。ヒジュラを使っている国も少なくはないのです。
 また、たとえば、昔の暦法では「閏月」という概念があります。公転周期と暦法とを上手く一致させられないために、ときどきある月を二度繰り返すのです。5月を繰り返せば、二回目の5月は「閏5月」と呼ばれました。
 それに、これまで人類が作り上げてきた暦法は、あくまでも地球上でのみ通用するものです。仮に「惑星が太陽の周りを一周するまでを一年」とするなら、火星の一年は686.98日となります。地球上の概念を適用するなら、およそ23ヶ月で一年となる計算です。
 科学の一層の発展が期待される21世紀にあって、果たして人類は、地球というちっぽけな惑星の公転周期にいつまでも捉われ続けていていいものでしょうか?
 一年は365日と1/4。そんな固定観念が、目の前にある幸福への道を閉ざしているのではないでしょうか?


 何が言いたいかといいますと、もう少し2006年が欲しいということです。
 来月は2006年閏12月なんだ。そうだ、そうなんだ、あははははは。


 ……過去類例のないぐだぐだな年末を迎えてしまいました。年を振り返る余裕もありゃしません。まったく、みっともない話です。早く心置きなく2007年予定の仕事にかかれるよう、最後の手段を採ります。
 私は閏12月に生きますが、めでたく2007年を迎えられる読者の皆様方。ありがとうございました。

(06.12.30)
 
うちあわせます
 こんにちは。米澤です。

 仕上がったときの枚数を、プロット段階から比較的正確に予測できるのが私の特技の一つだと自負していたんですが……。どうも今回は読みが甘かったようです。思ったより枚数がかかります。

 先日、東京創元社の担当編集者さんに、極めて深刻な事態を告げられました。
「米澤さん。『秋期限定』ですが、社内の風向きが変わってきました」
 ミステリの老舗、東京創元社の社内で、拙作への対応に変化があったとなればこれは容易ならざる事態です。仕事は綿密な打ち合わせが基本。それは小説執筆においてもかわりません。私は思わず、身を乗り出しました。
「と、いいますと……」
「前回の『夏期限定』を受けてのことなんですが」
 ほんの少し、躊躇いが見て取れたようでした。私は話の先を促すように、小さく頷きました。それに励まされてというのでもないでしょうが、担当編集者氏はおもむろに言いました。
「トロピカルパフェというスイーツの存在感に比べると、マロングラッセがタイトルでは普通すぎないかという意見が出ています」
 マロングラッセのどこに不満がある・あじふ。
(06.12.20)
 
こもります
 こんにちは。米澤です。

 こもります。
 このごろめっきり寒くなってきました。冬はどうしても閉め切りがちになるので(締切勝ち!? 縁起でもない)、部屋の空気もこもります。


 先日、書店員さんとお話しする機会がありました。どういう流れだったのか、名古屋の話でしたが、
「名古屋というと、いろいろ食べ物が有名になってきましたね。米澤さんは、味噌煮込みうどんは作るんですか」
 と尋ねられました。
 私は名古屋文化圏の生まれではないのですが、まあ、強いて訂正するほどのことでもありません。にっこり笑って答えました。
「そうですね、作りますよ。東京では、いい赤味噌を手に入れるのが面倒ですね。店に売ってなかったので仙台味噌で作ってみたんですが、やっぱり少し違います」
「へえ。麺も普通のとは違うんですか?」
「厳密に言えば、違うものを使うのが本当です。うどんの麺には塩が練りこんであって、茹でるときにそれが抜けるのが前提になっています。ですから、煮汁をそのまま食べる味噌煮込みうどんに使うと、塩辛くなるんです。
 名古屋では塩を含まない『煮込みうどん用の麺』が売られていますが、私は普通の乾麺で作っています。茹でて、締めて、湯がいて、それから出汁に入れて再度煮込んでいます」
「そうなんですか」
 やけに感心されるものですから、いい気になって話を続けました。
「野菜がたくさん取れますからね、いいですよ。中華鍋に出汁を張って、白菜なんかをどんどん入れるんです」
 と言ったところ。訝しげな顔をされました。
「え? 米澤さん、中華鍋で味噌煮込みうどんを作ってるんですか?」
「……そうですが」
「それって、そのまま食べるんですか」
 まあ、味噌煮込みううどんですから……。それがなにか?
 書店員さん、妙に真剣な表情で言いました。
「米澤さん、それは、わびしすぎますよ。だめですよ」
「そ、そうですか?」
 そんな風には思っていなかったものですから、私は随分戸惑ってしまいました。が、続く書店員さんの言葉が見事でした。
「それってたとえば……。『雪平鍋でインスタントラーメンを作ってそのまま食べる』ぐらい、わびしいですよ」
 その光景を、私は想像しました。そして、こう言わざるを得なかったのです。
「たしかにそれは、わびしいですね」
 ありふれた名古屋食にこんな寂寞の罠が仕掛けられていようとは、まったく、端倪すべからざる運命はどこに落とし穴の口を開けているかわかりませんな!


 さて。
 原稿の進捗状況が例によって例のごとく例が無いぐらいどうしようも無いことになってまいりました。
 しばらく集中するため、こもります。
 メールなどへの対応が遅れることが考えられます。携帯電話は繋がると思いますが、電話はお約束できません。
 各種連絡頻度が落ちると思いますが、悪しからずご了承ください。
(06.12.10)
 
神は存在します
 こんにちは。米澤です。



 神は存在します。
 その存在証明をお話ししましょう。



 初代はセガサターンで出ていた『カルドセプト』の、新作が出ました。なので、確定申告用会計ソフトと年賀状作成ソフトと交通経路探索ソフトを買うついでに、XBOX360ごと買ってきました。
 ゲーム一本遊ぶために本体まで買わざるを得ないとは、何ともコストパフォーマンスの悪い話です。そういえばニンテンドーDSも、逆転裁判をやったきり、押入れの奥で眠っています。
 しかしそれにしても、重かった! 新宿で買ったのが失敗でした。えっちらおっちら、随分長い距離を運んだものです。額に汗しました。

 汝の部署を放棄せよ 汝の価値に目覚むべし
 全一日の休業は 社会の虚偽を撃つものぞ

 などと呟きながら、とりあえず電源を入れてみます。それにしても、何日休業しても全然社会の虚偽を撃てた気がしないどころか、おのれのツケが溜まってるだけのような気がするのは仕様ですか?
 さ、それはそれとして、まずは最初から持っているカードから確認してみましょうか。
 ……と、思ったところ。

 いきなり電源が切れました。
 何だか、エラーコードらしきものを発しています。説明書を引っ張り出して首っ引き。ほどなく、エラーコードについて書いた文章を見つけました。『赤ランプ三つ点灯』は……。「マイクロソフトにお電話ください」。
 素直に電話して、オペレーターの指示に従って押したり引いたりした結果は「初期不良の可能性が非常に高いです」。


 ああ!
 テレビ、携帯電話、ガスファンヒーターに続いて、XBOX360までもが初期不良か!
 こんなことがありうるのか! いや、あろうはずがありません!


 神は存在する! 神は存在する!


 その神は、私にこう告げているのです!
「ゲームなんかしてないで、とっとと小説書きなさい」



 はーい。わかりましたー。
(06.11.30)
【参考】
テレビ:D端子不良(D端子で接続すると、赤色が表示されない)→原因不明・初期不良交換→ゆがむ(仕様)
携帯電話:頻繁に電源が切れる・ネット接続が出来ない→原因不明・初期不良交換
ガスファンヒーター:ガス漏れ警報(後に、本体ではなくガス管の問題と判明)→ガス会社による立入修理
XBOX360:電源が切れる→原因不明・初期不良交換

 存在するのは神ではなく、グレムリンかもしれません。
 ま、よくある話で、ぐちぐち言うほどのことじゃありませんね。
 
講演会に行きました
 こんにちは。米澤です。

 6月の同志社大学講演会は、基本的に「米澤穂信講演会」という単独のイベントでした。
 ですが今回は、「早稲田祭」という大イベントの一部です。来場者数は5万とも10万とも15万とも聞きましたが、結局どれくらいだったのでしょうか。田原総一郎や西村博之や高橋名人が来るという中、ひっそりとやらせていただければと思っていました。

 しかし、一つ困ったことが。
 講演会の前日、今日は早めに寝なくてはと思っていた私の耳に、ずんずんと威勢のいいビートが聞こえてきたのです。どうやら近隣に、のりのりの方がいらしたようです。それでも気を遣っているのか音楽そのものは我慢できないほどうるさくはなかったのですが、低音部ははっきり耳に届き、のみならず寝床にびんびんと振動を伝えてくれました。
 ビートに合わせて揺れる寝床では、眠り薬を呑んでも寝られたもんじゃありません。ビートは結局4時ぐらいまで続き、残念なことに講演会には寝不足で挑むことになってしまいました。
 オーケー、メーン。ノーミュージック、ノーライフ。でも次やったら警察な。おまえボトルネックサイン会の前日も、午前5時まで鳴らしてただろ。おいら一人の問題じゃないんだぜ。

 さて。
 高田馬場駅そのものはよく利用するのですが、それはあくまで飯田橋へのルートとしてであって(飯田橋には東京創元社や角川書店やトーハンがあります)、駅を出ることはあまりありませんでした。キャンパスに近づくと、さすがにすごい人だかりです。たこ焼きだの焼きそばだのお好み焼きだの、講演会がなければ食べたかったですねえ。
 講演会も二度目ということで、控え室での緊張はさすがに前回ほどではありませんでした。ゆっくりと最終打ち合わせを済ませ、時間を待ちました。
 緊張が極みに達したのは、講演会場へと続く扉の前に立ったときです。
 しかしまあ、「『不特定多数の前でミステリをネタに仕事をする』という意味では、やってることは普段と同じ」という覚悟は、今回も有効でした。

 参加者は、ある情報によれば120人程度。ある情報によれば220人程度。倍近く違いますね。私には数を数えている余裕はありませんでしたので、「たくさん」と申し上げます。
 たくさんの参加者に来ていただいて、大変、光栄に思います。拙い話ではありましたが、最後まで聞いてくださいましてありがとうございました。
 いいお客さまと気配りの行き届いた運営に支えられ、つつがなくイベントを終えられたことに感謝いたします。

 講演会の後は、ワセダミステリクラブの方々と打ち上げでした。
 学生時代には学生の打ち上げというものに接しなかった私ですから、結構興味津々なところはあったんです。ですが、ここで前夜のビートマニアが利いてきました。意識が薄れたため、打ち上げは一次会までの参加とさせていただきました。まあ、ゲストが二次会にも三次会にもついてくるというのは気兼ねなもの。それでよかったのかも、しれませんけれど。


 今回の早稲田大学講演会をもって、しばらく講演やそれに類する仕事は控えさせていただこうと思います。読者の方と接する機会は嬉しいものですが、まあ、メインのお仕事は書くことですからね。
 そういうわけで、しばらく引っ込みます。ではまた。

(06.11.10)
 
歪みます
 こんにちは。米澤です。

 講演会が近づいてきました……。
 だから、話は得意じゃないんですってば。むしろ積極的に苦手なんですってば。
 同志社の時のように、良いお客様に支えていただけることを願うばかりです。


 さて。
 以前、テレビ画像が歪むという話をいたしました。
 ふと思いつきましたので、どれぐらい歪むのか見ていただきましょう。


 左上に、「く」の字に曲がった柱があるのが見えますでしょうか。
 実はあれ、まっすぐなはずなんです。あの柱を画面中央に持ってくると、まっすぐになります。画面端にもっていくと、歪むのです。
 あ、手前のクルマは気にしないでください。ただのA13巡航戦車です。

 サービスマン氏の話を要約しますと……。
 ブラウン管テレビはもともと、画面端が歪むものなのだそうです。なので、それを補正する装置をつけます。
 しかし、この会社では主力をプラズマテレビに移行しました。国内の工場をプラズマテレビの生産に使うことになったため、ブラウン管テレビは海外で作ることになりました。そのため(ここがどうして「そのため」なのか、いまいちわからないのですが)、補正装置を取りつけられなくなったというのです。
 なので、多少は仕方ないですし、同型商品であればどれもこうなるので、故障ではないとのことです。

 要するに、プラズマテレビの生産に忙しくて、ブラウン管テレビのことは、まあ、多少のことはいいか、ということですね。
 店頭でその旨表示してあれば、選択の余地もあったんでしょうに。

 このぐらいの歪みでなんだ、という方のために、もう一枚載せておきます。


 多少、か……。

 関係ないですけど、角川ホラー文庫か祥伝社のホラーアンソロジーに『ゆがみ』って本があったと思ったんですが、調べても見当たりませんね。調べても出てくるのは、骨盤矯正の本ばかりです。

(06.10.30)
 
鍵を買いました
 こんにちは。米澤です。

 近況報告は久しぶりとなりました。ええと、一ヶ月ぶりですね。もし楽しみにしてくださっていた方がいらっしゃいましたら、すみませんでした。
 この一ヶ月、ちょっと手強い仕事に取り組んでいました。分量としては短篇一本分ぐらいだったのですが……。あのぐらいの量であれば、三日で終わることもあるんですけど……。

 その仕事もとりあえずキリがつきまして、生活をしていました。
 税務署に行ったり区役所に行ったり病院に行ったり銀行に行ったり。近くのスーパーに砥ぎ師が来ていると聞けば包丁を持って出かけたり(自分でも砥げますが、あまり上手くないのです)、この間の鮎川賞授賞式を直撃した嵐のせいで折れてしまった傘を金具とペンチで直したり(千円の傘を直すのに六百円の金具を買うというのも、間抜けな話ですが)。

 そんなことをしている中で、ふと、小物屋に入ってみました。特に欲しいものがあったわけではありません。まあ、強いて言うなら、簡単には折れない靴べらを探していましたが。
 しかし、入った店で、私の目を惹きつけたものがありました。キーホルダーです。
 しばらくの間、私はキーホルダーを使っていませんでした。単語帳を留めるような鉄のリングで済ませていたのです。それで充分ではあったのですが……。小洒落た小物をつい持ちたくなるのは、印籠の根付の例を引くまでもなく、洋の東西・老若男女を問わず、自然なことですからね。
 ちょっと時代をつけた真鍮製のキーホルダーが、何種類か。物色して、これだというものを見つけました。アンティーク家具にでも使いそうな、小さな「鍵」の形をしたキーホルダーです。なんのかんのと言いましても、私にも自分はミステリを書いてるひとだという意識があります。秘密を強く意識させる「鍵」、欲しくなりました。

 幸いそんなに高くなかったのでさっくり購入しまして、これまで使っていたリングから鍵を一つずつ移していきます。家の鍵やバイクの鍵など、計四つ。
 全てを移し終わった私は、しかし、「あれ?」と呟いてしまいました。

 いい雰囲気だった「鍵」のキーホルダーに、四つの鍵をつけました。
 ……するとそこには、五つの鍵をぶらさげた金属リングが。
 あれ? キーホルダーはどこに?

 生まれてこの方、こんなに間の抜けたものを買ったことはありませんでしたよ、ええ。

(06.10.20)
 だけどさ!
 デザイナーさんってのがいるわけでしょう。その人はさ、ほんの一瞬でも、疑問に思わなかったのか!
 キーホルダーが! 鍵の形をしていたら! 実際に使ったときに! どうなるのか!
 ちったあ想像して、仕事したのかあッ!

 買う方は想像してませんでした。ムネン アトヲタノム。
 
『ボトルネック』サイン会を行いました
 こんにちは。米澤です。

 去る9月17日、紀伊國屋書店新宿南店さんでサイン会を行いました。
 天気はあまり良くなかったのですが、昨年の『犬はどこだ』サイン会の倍を超えるお客様にご来場いただき、本当に嬉しかったです。

 サイン会を始めてしばらく経って、手伝ってくださっていた担当編集者さんに「ショースバのカメラが来てます」と耳打ちされました。しかし私は読者さんと手元の本とペン以外に目と頭をやる余裕がなく、いったい何が来たのか全然ぴんと来ずにいました。
 やがて、視界の隅をプロ仕様の巨大レンズがかすめました。正直、なんだあれはと思いましたです。そちらをきっちり見ることが出来ず、カメラなのかビデオカメラなのかさえわからなかったのです。
 サインの合間を縫って、担当編集者さんにお聞きしました。
「あのカメラはなんですか」
「ショースバです」
 ショースバ……。前衛的な何かのショー?

 それが「小説すばる」のことだと気づいたのは、もう少し経ってからのことです。

 ということで、「小説すばる」誌に、サイン会の様子を収めた写真と共に『ボトルネック』インタビューが載ります。もう一つ情報を確認できたら、発売日などの情報を別途お知らせいたします。

 それにしても今回は多くの方にご来場いただいたので、待ち時間が長いのがなんとも申し訳なかったです。待ち時間を短くするためには一人当たりの時間を少なくするしかないのですが、それは絵に描いたような本末転倒ですし……。
(ちなみに会場には「撮影禁止」の札が下がっていたそうですが、それは別に私が恥ずかしがり屋とか写真に撮られると魂が抜ける体質とかいうのではなく、「一緒に写真を撮る」リクエストが多くなると時間がかかりすぎてしまうためでした。今回は開始時間が遅かったので、あまりゆっくりやっていますと閉店時間を過ぎてしまうおそれがあったのです)
 紀伊國屋書店さんの配慮で会場には椅子が用意されていて、ずっと立ち尽くしということはなかったようなのですが。
 もし次にこういう機会をいただけたら、何とか読者の皆様を退屈させずに済むよう、何か芸でもしましょうか。料理とか。
 うん、悪くないかもしれないですね。
 後はその間、代わりにサインをしてくれる方を見つければ完璧です。


 たくさんの方のご参加に、心よりお礼を申し上げます。
(06.09.20)
 
思い出します
 こんにちは。米澤です。

 夏が行きましたね。風はもう秋の気配です。
 家を出られなかった理由は締切なのですが、編集者さんからは締切に遅れたことではなく、夏のクリアランスセールで使いまわしのきく服を買わなかったことを怒られました。白ジャケットの罪は未だに重いようです。
 気がつけば重陽の節句も過ぎました。
 私が生まれた街は秋祭りに獅子舞を奉納するんですが、このストーリーがちょっと興味深いものでした。魔獣「獅子」を戦士「金蔵」と僧侶「ササラ」が倒すという話です。

 金蔵は短槍二刀流。ササラは金蔵が健在の間は逃げまわってばかりいます。仕草からして、ササラはもしかしたら女かもしれません。
 獅子は強力で、金蔵と獅子は死闘を繰り広げますが、力及ばず金蔵は噛み殺されてしまいます。はらわたを何度も食い荒らされますから、まあ、死んだでしょうねえ。
 一人残されたササラは獅子の前に立ち、手にした楽器を奏ではじめます。獅子はそれに聞き惚れ、いつしか眠ってしまうのです。ササラは仰向けに倒れた金蔵のそばにしゃがみこみ、しきりに撫でさすります。
 すると金蔵は生き返り、同時に二本の短槍の代わりに、天から一本の長槍が降ってきます。というか、ゴザの外に控えていた係りから投げ込まれます。
 授かった長槍を手に、金蔵は再度、獅子に戦いを挑みます。激闘の末、今度こそ金蔵は獅子を討ち果たすのでした。

 つまり、

【戦い】→ 【敗北】 → 【身近で意外な協力者】
→ 【復活】 → 【新たな力】 → 【最終的な勝利】

 という構図なわけで、これがまた実に、テンプレート通りです。テンプレ通りというのは自動的に盛り上がり、見飽きません。誰が考えたんでしょうね、この舞。昔から伝わっていたにしては、お約束の踏まえ方が妙に現代的な気もするんですが……。

 しばらく見ていません。今年も、まあ、無理でしょうね。
 雑誌の仕事を、シリーズもの新作の形でいただけそうです。数日中に情報をお伝えできればと思っています。
(06.09.10)
 17日のサイン会ですが、当日分もありそうです。40人か、30人分ぐらいでしょうか。
 どうぞよろしくお願いいたします。
 
構想です
 こんにちは。米澤です。

 新作『ボトルネック』が発売になりましたが、ちょっと理由があって家から出られない呪いにかかっているのでまだ店頭に並んでいるところを見ていません。
 部屋に一冊だけ残しておいた『ボトルネック』を手にとって、楽しんでもらえるといいのだけれど、と祈るような気持ちでいます。
 何となくページをめくって執筆中のこと(ここの二月・三月あたり参照)を思い出していると、ふと思いつきました。
 大学生ぐらいのアホで能天気な連中の、なぁんにも起こらない話を書いてみたいですね。

 今日は肉を食いたくなったので焼肉。
 ただし金がないので1Kの部屋でベーコン焼き。
 で、何でお前ら俺の部屋に集まってくる?
 焼きベーコンを旨く食べる会結成決定?
 では通称は「望肉会」で。
 肉を食うため金を稼ごう。株とかどうよ。
 ていうか女連れてくんなよバカヤロウ。でてけ! でてけよぅ!

 ……みたいな。
 まあ、何も起こらない話をエンターテインメントにするのは、かなり難しいんですが。
 なぜ『ボトルネック』執筆中のことを思い出したらこんな話を書きたくなったのか、それは読んでいただければ察しがつくかもしれません。

 察しがつくかもしれません。
 さっしがつくかもしれません。
 冊子がつくかもしれません。

 というわけで、ときわ書房の聖蹟桜ヶ丘店様で、販促冊子を作っていただきました。
 冊子といいますか、いわゆる「ペーパー」なんですがこれがよく出来ておりまして、私もちょっとだけインタビューに答えさせてもらっています。
 お近くにお住まいの方は、ぜひご覧ください。もちろん無料です。
(06.08.30)
 思いつきめいた構想(というか思いつき)もなかなか馬鹿にならないものでして、この間明け方に目が覚めたとき蹲踞しながら五分で考えた話を長篇として書くことになりそうです。いや、練りますけどね、これから。ベーコンは関係ないです。
 こうして執筆を継続できるのも、読者の皆様の支持あったればこそです。いまさらちょっと白々しいんですが、ちょっと照れながら申し上げます。
 書かせてくださって、ありがとうございます。
 
料理中です
 こんにちは。米澤です。
 昼食にと思って、まったり炸醤麺(ジャージャンメン)を作っておりました。
 冷たく引き締めた麺に、ちょっと辛味のある熱々のひき肉あんをかける、おなじみ夏においしい麺料理。料理もとても簡単です。

*かんたんなレシピ(当然一人分)

食材
・中華麺(一玉)
・ぶなシメジ(一パック)
・豚or牛ひき肉(100g前後)
・にら(そこそこ)
・小ねぎ(ほどほど)
・しょうが(練りしょうがで充分)
・にんにく(チューブ入りで充分)
・水(150ccぐらい)

調味料ほか
・豆板醤(註1)
・甜麺醤
・中華スープの素(顆粒状)
・オイスターソース
・水溶き片栗粉(註2)

……註1:スーパーマーケットに売ってある豆板醤は、大体二種類ぐらい。「youki」のものと、「李錦記(エスビー)」のもの。「李錦記」の方が高い。
 味は、「李錦記」が旨く、「youki」が辛い。炸醤麺は少し辛い方が合うと思うので、今回使うのは「youki」。本来は辛味はつけないそうですが、知ったこっちゃねえです。

……註2:片栗粉は保存状態によって固着力が大きく変わるので、柔軟に。片栗粉:水=1:1は基本。


手順
1)大鍋と小鍋にそれぞれ湯を沸かす。大鍋にはたっぷりと、小鍋には150cc

2)にら、小ねぎ、ぶなシメジを切る。ぶなシメジだけ別にする

3)小鍋の湯が沸くので、中華スープの素とオイスターソースで「スープ」をつくる

4)中華鍋を強火で焼く。油を引いて、煙が出るくらいに熱してから油を捨てる

5)中華鍋の粗熱を取り、中火にして、ぶなシメジ、しょうが、にんにくと、豆板醤小さじ1を加える

6)中火のままひき肉、甜麺醤大さじ1(ビンに大さじが入らないので、小さじ3)を加える。強火にして一気に炒める

7)小鍋の「スープ」を加える。大鍋の湯が沸騰していたら、中華麺を加え、硬めに茹でる

8)中華鍋が軽く沸騰したら、にら、小ねぎを加える。熱を加えすぎると煮くたびれるので、温まる程度に少し待ったらすぐとろ火に。水溶き片栗粉を加え、少し加熱する



 
ところで突然ですが、水道局から工事に伴う断水のお知らせです。




9)麺を流水に晒し揉み洗いし、皿に盛り、中華鍋のあんをかけて完成


9)麺を流水に晒し揉み洗いし
↑断水中


 ほかほかの中華麺を前に、涙がこぼれました。
 文明人はライフラインを行政に依拠しています。都市生活を営む以上、行政からの通達事項はこまめに確認しなければならないと改めて学んだ昼でした。

 ……ボクの炸醤麺……。
(06.08.20)
 結局、冷蔵庫にあったペットボトルのミネラルウォーターを、一本まるごと使って麺をしめました……。
 
思い違いです
 こんにちは。米澤です。
 目の前に文庫本があります。『彼女はたぶん魔法を使う』(樋口有介・創元推理文庫)。「柚木草平シリーズ」の第一作で、長く新刊では手に入らない状態になっていました。これの復刊はとても嬉しいんですが。……どうしても、一つのフレーズが頭から離れません。
 これを書くと、私の趣味性向について、ある種の誤解を招くんだろうなぁとわかってはいます。書かないほうが無難だと。
 ああ、でも、書かずにはいられません。この『彼女はたぶん魔法を使う』を見るたびに、私はこう思ってしまうのです。

『彼女はたぶん呪殺に弱い』

 続編は『彼女はたぶん破魔反射』。お、おかしいな、私はそんなに熱心な女神転生ファンではなかったはずなんですが(参考)。
 ちなみにその隣には『時計を忘れて森へいこう』(光原百合・創元推理文庫)が。……そういえば置時計が壊れたんでした。時計を買いに街へいかねば。
 その隣は『自殺について』でしたが、これは別に、何も連想しません。


 先日、某社編集者と言い争いになりました。
「そうですよ!」
「そんなことありませんよ!」
 と、週末の街中で大騒ぎです。
 原因は、ある日本の習俗の解釈の差です。

 相撲で、横綱クラスが負けると座布団が舞いますよね。
 あれ、どうして投げるんだと思いますか?
 もちろん根源的な原因は、大番狂わせへの興奮なんですが……。

 私の記憶ではこうでした。「座布団投げは日本流のブーイングである。勝つべき横綱が負けたことに、尻に敷いていたものを投げて抗議をしているのだ」
 編集者さんの主張はこうでした。「座布団投げは賛美である。横綱を倒す大金星を上げた力士を称える気持ちの発露なのだ」

 どちらも譲りませんでしたが、簡単に調べてみたところ、以下のような説に説得力を感じました。
「座布団投げはもともと、それを投げ入れることにより『あとで祝儀を持っていく』という意思を示す行為であった」。
 つまり、おおすじで、勝者を称える行為。編集者さんが正しかったことになります。

 うーむ。声援と罵声を取り違えるとは……。思い違いは恐ろしいものですな。
 心するといたしましょう。
(06.08.10)
 なお、私の調べは本当に簡単なものでした。今後、時間に余裕があるときに少しずつ調べるつもりではいますが、現時点では「これが定説である」と言うことは出来ません。ご了承ください。
 
ダメダメです
 こんにちは。米澤です。
 ご心配をおかけしましたが、安静状態は解除されました。ちなみに病名は、蜂窩織炎でした。

 さて。
 八月末日発売予定の新作『ボトルネック』ですが、最後の最後まで新潮社の担当編集者氏には迷惑のかけ通しで、30日が締切と言われればお送りするのは3日、水曜がデッドラインと言われればお送りするのは水曜の正午とそりゃあもう申し訳ないやら不甲斐ないやら、ダメダメです。

 そんなダメダメな気分を素晴らしく助長する情報が入りました。

「米澤さん。MD5バトルというサイトをご存知ですか」
 名前は知りませんでしたが、そのサイトを見に行きますと、最近ところどころで見るようになったネタのことだとわかりました。
「ええ、まあ。文字列を入力して、その文字列から能力値を導き出し、二つの文字列同士で戦わせる遊びですよね」
「そうです。実際に遊んだことは」
「いえ」
「そうですか。実は、『米澤穂信』を入力するとですね……」
 私は少々うんざりしました。「MD5バトル」は確かに、この手の遊びの中では面白い方です。ですが、いちいち自分の名前を入力してどうなるかと試す気にはなりません。
 あまり興味がないんですが、と言いかけましたが、続く言葉はちょっと意外なものでした。
「弱いんですよ」
「は?」
「むっちゃくちゃ、弱いんです。作家の名前の中では最弱じゃないですかね。米澤さんが勝てる相手を見つけるほうが難しいです。というか見つけられません」
 いや、それは「米澤穂信」という文字列が弱いんであって、私が弱いわけでは……。いえ、別に強くもないですが……。
「いやー、弱いですよー」
 何故そんなに楽しそうなんですか?

 しかしそこまで弱い弱いと念を押されますと、さすがに気になってきます。
 これは一つ試してみようと、問題のサイトにアクセスしました。
 二つの入力欄の片方にはもちろん「米澤穂信」を。対戦相手には、少し考えて、目の前の本棚の一番上の棚の右端の本の著者を入れることにしました。棚の一番上は創元推理文庫が占めています。ええと、山口雅也先生……、いえ、違いました、座ったままでは見えませんでしたが、右端の本の著者は平石貴樹先生でした。
 では、やってみましょう。

平石貴樹 vs 米澤穂信

平石貴樹 vs 米澤穂信戦闘開始!!
[米澤穂信]の攻撃 HIT [平石貴樹]は1のダメージを受けた。
[平石貴樹]の攻撃 HIT [米澤穂信]は170のダメージを受けた。
[平石貴樹]が[米澤穂信]を倒しました(ラウンド数:1)。

○平石貴樹
1R
×米澤穂信

 わ、ワンラウンドKOですか……。というか米澤穂信の攻撃は1ポイント……。
 いいでしょう。弱い弱いと言われてあっさり勝っては面白くありません。つぎ行きましょう。

山口雅也 vs 米澤穂信

山口雅也 vs 米澤穂信戦闘開始!!
[山口雅也]の攻撃 HIT [米澤穂信]は1のダメージを受けた。
[米澤穂信]の攻撃 HIT [山口雅也]は33のダメージを受けた。
[山口雅也]の攻撃 HIT [米澤穂信]は1のダメージを受けた。
[米澤穂信]の攻撃 HIT [山口雅也]は21のダメージを受けた。
[山口雅也]の攻撃 HIT [米澤穂信]は85のダメージを受けた。
[米澤穂信]の攻撃 HIT [山口雅也]は23のダメージを受けた。
[山口雅也]の攻撃 HIT [米澤穂信]は85のダメージを受けた。
[山口雅也]が[米澤穂信]を倒しました(ラウンド数:4)。

○山口雅也
4R
×米澤穂信

 粘るじゃないかと思ったら、まああっさりと……。
 わかりました。確かに弱いようです。ではどんどん行ってみましょう。

○竹本健治
5R
×米澤穂信

○倉知淳
2R
×米澤穂信

○辻真先
2R
×米澤穂信

○若竹七海
2R
×米澤穂信

○北村薫
1R
×米澤穂信

○泡坂妻夫
1R
×米澤穂信

○山田風太郎
2R
×米澤穂信

○北山猛邦
2R
×米澤穂信

 ……これで10連敗です。

○加藤実秋
1R
×米澤穂信

○有栖川有栖
2R
×米澤穂信

○都筑道夫
3R
×米澤穂信

○桜庭一樹
1R
×米澤穂信

○エラリー・クイーン
2R
×米澤穂信

○フランシス・アイルズ
1R
×米澤穂信

○ディクスン・カー
1R
×米澤穂信

○ネビル・シュート
2R
×米澤穂信

○アントニイ・バークリー
2R
×米澤穂信

○連城三紀彦
1R
×米澤穂信

○ハリイ・ケメルマン
2R
×米澤穂信

○ロイ・ヴィカーズ
2R
×米澤穂信

○思緒雄二
1R
×米澤穂信

○A・B・コックス
2R
×米澤穂信

○秋山完
1R
×米澤穂信

○梶山季之
1R
×米澤穂信

○伊坂幸太郎
2R
×米澤穂信

○恩田陸
1R
×米澤穂信

○レマルク
1R
×米澤穂信

○北森鴻
1R
×米澤穂信

 ……まともな戦いにもならないまま30連敗です。
 あははは、こりゃ確かに、むっちゃくちゃ弱いですな。攻撃力や防御力といった数値は10〜100の間で決まるようで、普通で50前後、80前後で「高い数値」と思えるぐらいのバランスですが、「米澤穂信」の能力値は軒並み20前後です。このままいくら続けても、勝ち目がある気がしません。
 これは遊びであって、数値は「米」と「澤」と「穂」と「信」の文字コードから求められているに過ぎない。わかっちゃいますが、並み居る作家陣にこうもころころ負け続けるのを見ていると、一種マゾヒスティックな楽しみを感じすらします。

   しかし、ああもうまったく、一仕事区切りがついたとはいえ、こんなことをして遊んでいる場合ではないのです。一時間もかけて私は何をやっているんだか。
 ダメダメですね。
(06.07.10)
 一応もう一度書いておきますが、上の30名は私の目の前の本棚に入っていた本を右上から見ていって出てきた名前です。最上段はだいたい東京創元社の本ということになっていますが、二段目以降はそりゃもう混沌としたものです。メジャーマイナー、日本人外国人がごちゃ混ぜなのはそういう理由です。
 あと、決まり手は私が思いつきでテキトーにつけたものです。当のサイトで試されましても決まり手は出ませんので念のため。

(06.08.28追記)決まり手を書いていたんですが、プロレスを知らない私にはやっぱりセンスのある名前をつけられませんね。恥ずかしいので消しました。
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